【 FRAG-ILE-MENT 】 ≪ Home Sweet home(3) ~つよがり(4)~ ≫

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「セックスしてる時間は?」
「えー、二、三時間?間に長い休憩挟んだりするとトータル五時間くらいとかかなー」
「一晩の回数は?」
「それって出す回数?大体三、四回?」
まだ二十代だしね、一回出した後も裸でイチャコラしてればまた元気になって再戦しちゃうことが多いけど、基本、尚吾はあたし中心で何でも進めてくれるから。割と一回であたしが満足してる時なんて気持ち読んで、後は優しく抱き合うだけでいてくれたりもするんだよね。ホント優しいなって思う。だからちょっと申し訳なくって、たまに、尚吾の好きなようにしていいよ、って伝えてる。その時の尚吾はあたしを気遣いながらも激しくて、そういうのもたまには悪くないなって思う。自分の感情とは関係なく、激しく快感を感じる場所を責められて、なぶられて、何度もイカされる。好きな人にされてるって思うと快感が増すような気がするし、快感にそれだけじゃなくもっと何か幸せなものが上乗せされる感じがする。
「麻耶はイクの?何回くらい?」
あー、結構ハズい。顔赤くなってないかな。
「いつもおんなじ調子じゃないけどね。大体イクかな?浅かったり深かったりはあるけど」
「あー、そーよね。だけどさ、イキ方って同じじゃないのに、何でか男って深イキしないと納得しなくない?」
「うん、あるねー。こっちは浅くイってるだけで気持ちよくって、割とそれで満足してるのに、何が何でも深くイカせないと男の沽券に拘わるみたいな」
尚吾にはないんだけどね。尚吾はあたしの様子を見ながら、あたしの調子に合わせて動いてくれる。あたしが深くイキたがってる時は深くイカせてくれるし、浅く何回かイッてこれ以上イキたくないな、イカなくていいかなって思ってる時はそこでセーブしてくれる。そういうの尚吾は手慣れてるから?それとも、何よりもあたしを一番大事に思ってくれてるから?
「んで、何回くらい?」
「あー、浅くなら三、四回イッたりするかなあ」
「ふむふむ。でもさー、深くイカないと何か物足りなくない?男が出してこっちが深イキせずに終わると、何か損した気がするというかさ」
確かにそういう女性もいるかもね。
「好きな体位は?」
まだ続くのか。
「正常位」
やっぱりお互いに向き合って抱き合えるからね。上から見つめられて、尚吾に抱かれてるって感じが強くする。
「あたしはバックが一番好きだな。後ろからガンガン突かれるとメチャ気持ちいい」
うん。参考意見ありがとう、映美ちゃん。
「バックも時々するよ。ただ、あたしバックって何か苦しいんだよね」
個人差なんだろうけどね。性器の位置とか作りが関係してんのかな。バックが気持ちいいって女の人も多いけど、あたしはダメ。何か苦しい圧迫感っていうか、正常位の時に奥を突かれてるのとは違う感覚なんだよね。映美ちゃんと違ってバックであんまりガンガン突かれてると、違和感があって気分が醒めてきちゃう。その時のムードもあるかな。結構気分が盛り上がって、興奮してる時に流れでバックに移行した時なんかは、ちょっと強い刺激がよかったりもするけど、それでもあんまり長く続けられると気分が下降して来ちゃうし、最後は向き合って抱き締めながらフィニッシュして欲しい。
「騎乗位も割と好き」
「おー、麻耶ちゃん、積極的」
華奈さんが囃し立てる。
積極的っていうかさ、自分が気持ちいいからっていうより、あたしが動いて気持ち良さそうにしてる尚吾を見るのが好きなんだよね。好きな男が自分の下で気持ち良さそうに顔を歪ませたり身悶えたり、喘ぎを我慢したりしてるのって可愛いよね。興奮するし。
「騎乗位いいね。自分の好きなタイミングでイケるしね。こっちがイッてないのに勝手に腰振って終わっちゃったり、もうちょいなのに向こうに先にイカれちゃったりすると最悪だもん」
どこまでも快感追求型だな、映美ちゃんは。いや、ホント清々しいわ。
「中にはこっちがコントロールして、射精しないようにペース落としたりしてるのに、我慢できなくて、あっ、イク、とか情けない声出してイっちゃうヤツもいたけどね。おい、どーすんだよ?こっちまだ充填四十パーなんだけど。お前のためにこっちは気持ちよくなりたいの我慢してセーブしてたんだけど?ってキレたくなった時ある」
「どーしたの、そん時は?」
「無理矢理ソッコー立たせて継続したよ。出したばっかだから遠慮なく腰ガン振りして気持ちよくイケたね。向こうはずっと呻いてたけど」
ふんす、と自慢気に告げる映美ちゃん。流石は猛者。肉食女子の鑑。
「屈曲位もよくない?ちょっと苦しいけど、深くまで刺さるしさ。何か体位的にすっごく興奮するよね、アレ」
おいおい、好きな体位談義はどこまで続くんだ?
「珍しいね。普通あれ嫌いな人が多いと思うけど」
「ちなみ、華奈さんは?」
「あたしも苦手かな。身体曲げられて苦しいし、挿入してるトコも顔も丸見えで、恥ずかしくて快感に集中出来ない」
あー、よく分かる。
「何か男目線で気持ちのいい体位って気がする」
それは正解かも。何たって映美ちゃん、中身オヤジだから。
「男に恥ずかしい部分見られてるって思うと、興奮して余計感度上がんない?」
それは人によると思うなあ。映美ちゃんは恥ずかしさがスパイスになるタイプで、華奈さんは羞恥心がブレーキになっちゃうタイプなんだろうね。あとは人によって恥ずかしく感じる度合いが違って、ある人には興奮を助長させるような恥ずかしさであっても、別の人にとっては 物凄い羞恥を感じさせて、とても興奮を助長したり、況してや快感に繋がったりするものじゃないんだろう。
「あと、屈曲位って挿入深いから、中イキとか深イキしやすいっていうよ」
成る程。映美ちゃん、セックスに関しては実に研究熱心だよな。体勢の苦しさや恥ずかしさを乗り越えられれば、気持ちよくなれるのかもね。
「まあ、結局は個人の好みの問題なのかな」
と、華奈さんが着地点を示す。
「セックスする場所は?」
「んー、彼の部屋が多いかな。ホテルもたまに行く」
たまにホテル行くと気分が変わっていいよね。ラブホテルだといかにもセックスするぞって気持ちになるし、お洒落なシティホテルだったら気分が高まるし。
って、ちょい待ち。何だこれ。成人女性の性に関する実態調査でもしてんのか。
「ねー、何であたしだけこんな詳細に聞かれてんの?」
「だって、現状で男がいるの麻耶だけだし」
疑問をぶつけるあたしに、映美ちゃんは至極当然といった顔で答える。
「一々ちゃんと答える麻耶ちゃんも麻耶ちゃんだって思いながら聞いてた」
何を今頃って感じで華奈さんに言われる。
「それはさー、映美ちゃんと華奈さんだったら、話してもいいかなーって思って」
「じゃあ何の問題もないじゃん」
事も無げに切って捨てるかのような映美ちゃんの返答には何か納得いかない。あたしばっかり答えるってのはどーなのよ?全然恥ずかしくもなんともないって訳じゃないんだからね。映美ちゃんと違ってさ。
その後も悪びれることなく映美ちゃんの追求は続く。
「特殊なプレイは?」
「例えば、何?」
まあ幾つかは思い付くけど、素直に答えるのも癪なので聞き返してみる。
「コスプレ、マットプレイ、野外SEX、SM、カーSEXとか」
「ないなー。いたってノーマルなセックスしかしてない。刺激が足りなくなる程回数重ねてないしね」
まだ交際半年余り、セックスするようになって二ヶ月ってトコなんですよ。プレイに走るほどマンネリ化してないっつーの。
「映美ちゃんはどーなのよ?」
「今挙げた程度のは一通りやったよ」
コンプリートとは。実にお見逸れしました。
「SMってどの程度の経験あるの?」
好奇心から尋ねてみる。
「SMっつってもソフトなヤツね。縛って目隠ししてのローター、バイブ、電マの三点責めとか。蝋燭とか鞭打ちとか鼻フックとかのハードなのはまだ経験ないよ」
映美ちゃんは明るく答えてくださいました。“まだ”ってその内経験しようって気があるんかいっ?
「3Pは?」
「あると思うの?ってか、映美ちゃんはあるの?」
まさかと思いながら質問し返す。
「いやー、まだないんだよねー。やってみたいなーとは思うんだけど、なかなかいい相手が見つかんなくて」
ホッとしたよ。そうそうそんな相手見つかる訳ないと思うんだけど。映美ちゃん、ホント何処まで行くつもりなの?
高校卒業してからこっち、あんまり会ってなかったけど、映美ちゃんがこんなに遠く離れてしまってたとは思わなかったよ。いや、だからって近づこうとは決して思わないけどね。これからもどうか我が道を突き進んで行って貰いたいものだ。遠く離れた場所から心密かに応援させていただきます。くれぐれもあたしは巻き込まないでね。慎んで辞退申し上げます。

「中出しは?」
「ないよー。まだ妊娠したら困るし。向こうは結婚する覚悟はあるみたいで、いつデキちゃってもウェルカムらしいけどね。あたしの決心が付くまではしっかり避妊してくれてる」
男って中出ししたがるもんだけど、そこんトコは尚吾を信頼してるかな。あたしが悩んだり傷付いたりするようなことは、絶対にしないってそう自分自身に固く誓ってるんだと思う。もう二度とあたしを傷付けないって。
「麻耶ちゃんは結婚しようとは思わないの?」
華奈さん、いきなり重い質問投げて来るね。
「まだ、分かんない」
「それは恋人としてはいいけど、結婚相手としては分かんないってこと?」
うおー、内角低めに切り込んでくるなー。
「んー、結婚そのものをまだ考えてないなあ」
今、尚吾と会って一緒の時間を過ごすのは楽しいよ。それでも結婚したいとか、結婚してもいいとか、そういうことを考える機会を作らないようにしてる。結婚を考えることに踏み込まないように、注意深く避けて通ってる。
「何れは結婚したいとは思うの?」
何だろう、何気に追い込まれてる感じがするんだけど。
「んー、それも分かんないかなー」
つい、はぐらかしてしまう。
「あれ、麻耶も結婚しない派?」
あ、映美ちゃんが口挟んでくれた。よかった。何か助かった気がする。
「別にそう決めてる訳じゃないけど」
「あたしだって、何も絶対結婚しない!って固く誓ってるつもりはないわよ。もしかしたらすっごく好きな人が現れて、どうしても結婚したくなって、あっさり結婚して子ども作って、幸せな家庭生活送ることになるかも知れないしね」
明るい調子であたしが映美ちゃんの方を向いて告げれば、華奈さんも軽いジョークを交えて後に続いた。
「その可能性は限りなく低いにしてもね」
「言うなっ」
あたしが皮肉を投げて、華奈さんが声を荒げる。様式美みたいなやり取り。交わした目がお互い笑ってる。分かってるんだ、華奈さんは。
「まーね、あたしも結婚する時って、勢いとタイミングってトコあったからなー。そんで、いざ結婚準備始めたら面倒くて結婚辞めたくなったりしたし」
映美ちゃんが自分の経験を語り始める。
あー、その心境何か分かるような気がする。準備しなきゃいけないことは沢山あるし、時間に追われてタイムリミットは段々と迫って来るし、色々考えちゃうし不安にもなって、全部投げうって逃げちゃいたくなったりするのかな。
「今更辞められないし、結局結婚したけどね」
アハハ、と乾いた笑いを浮かべる映美ちゃん。
その結婚は結局不幸な結末を迎えてしまったのだけれど。
ううん、それは違うか。映美ちゃんは幸せな結婚生活は得られなかったけど、光輝くんっていう宝物を手に入れられたんだもんね。映美ちゃんにとって決して無意味な結婚じゃなかった。そうだよね。

「セックスに限らず、恋愛関係で悩みがあるんだったら、遠慮なくあたしに相談しなさいよ」
自分に任せろとぱかりに胸を張って映美ちゃんが言う。
「そう言ってくれるのは嬉しいんだけど、何で自信満々なの?そこが理解不能」
セックスに限っては、映美ちゃんは大したものだと思うよ。見習いたいとはあんまし思わないけど。
あたしが疑問を投げ掛けると、映美ちゃんはフフンと笑った。
「色恋に関しては麻耶に先んじてるっていうかねー。あたしに一日の長があるってモンよ」
自慢気に言う映美ちゃんではあったけど、ついうっかり口を滑らせてしまった。
「まあ確かに先んじてるのかね。浮気されて離婚までしてるとか」
ギロリと映美ちゃんに睨まれる。
「あっ、麻耶、言ってはならんことを!テメー、縛って前後にバイブぶちこまれたいか!」
「後ろはまだ処女地を守ってるから許して!」
危険を感じて思わず懇願してしまった。
「って言うか、映美ちゃん、もしか後ろも経験済み?」
映美ちゃんの口振りに何となくそんな気がして、思わず確かめないではいられなかった。
「おうよ!」
いや、そんな堂々と応じられてもさー。なんなの、そのこちとら江戸っ子でい!みたいなノリは?そこ、恥ずかしげもなく自慢するトコ?映美ちゃんの態度に甚だ疑問を感じる。ほら、隣で華奈さんも白い目で見てるよ。
「後ろも慣れれば気持ちいいから。二穴刺しとか結構ハマるよ」
涼しい顔して映美ちゃんが言う。いやー、ハマったら恐いっしょー?



 

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