【 FRAG-ILE-MENT 】 ≪ BitterSweet Day (2) ≫


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学校から帰ったら玄関に女性物のブーツが二足並んでいた。一つは見覚えのある、この冬麻耶さんがよく履いているこげ茶色のジョッキーブーツ。もう一つはス エード素材のワインレッドのショートエンジニアブーツで多分栞さんのだった。ベルトのバックルがちょっとハードっぽいのにでも可愛い感じで、あ、可愛 い、って見た瞬間思った。
そして麻耶さんの予告が嘘や冗談ではなかったことを知って、あたしの頭上にどんよりとした暗雲が立ち込める。
「ただいま」
いつもより一段低いテンションで帰宅を告げる。
「お帰り」
すぐにリビングから匠くんが出迎えてくれた。
「ただいま」
匠くんの優しい笑顔に触れて、曇っていたあたしの顔も綻ぶ。
それも束の間、匠くんのすぐ後ろから栞さんが顔を覗かせた。
「お帰りなさい。お邪魔してます」
いつもの変わらない柔らかな笑顔に迎えられて、一瞬疎ましく思ってしまったことに後ろめたさを感じずにはいられなかった。
「ただいま」
笑い返そうとして何だかぎこちなくなってしまった。
「どうかした?」
あたしの様子に気付いた匠くんに問いかけられた。慌てて無理やりの笑顔で頭(かぶり)を振る。
「ううん。何でもない」
匠くんの問いかけに、栞さんもあたしの顔をまじまじと見つめている。
「あ、あの、お久しぶりです。いらっしゃいませ」
自分で言って、栞さんと久しぶりに会ったことに改めて気付いた。夏休みにみんなで会って以来だった。夏休み以降あたしは受験勉強で余裕がなくって、栞さんもそんなあたしを気遣ってくれてたみたいで、電話でも昨年の年の瀬に一度話したっきりだった。
「うん。ホントに久しぶり」
栞さんはふんわりと優しく笑った。この笑顔を向けられたら絶対誰だって和んじゃうって感じの素敵な笑顔だった。
「合格おめでとう。萌奈美ちゃん」
え?
続いて栞さんが告げた言葉に、内心驚きの声を上げてしまった。
「立ち話もなんだし、ソファでゆっくり話したら?萌奈美も先に着替えてきたら?」
匠くんに言われて、栞さんは「そうですね」って笑い返し、あたしも頷いて一旦自室に着替えに入った。
部屋着に着替えて手洗いとうがいを済ませリビングに行った。
ソファには麻耶さんもくつろいでいて、あたしを見て「お帰りー、萌奈美ちゃん」って言ってくれた。
「ただいま」って返事を返してあたしも空いているソファに腰掛けた。
あたしがソファに座るのを待っていたようなタイミングで、匠くんがあたしの前にフレーバーティーの入ったカップを置いてくれた。カップからふわっと甘いフルーツの香りが立ち昇って鼻先をくすぐる。
「あ、ありがと」
遠慮がちにお礼を言う。どういたしまして、って感じであたしの隣に腰を下ろしながら、匠くんが笑って頷き返す。あたしが帰宅するといつも匠くんはあたしに お茶や飲み物を用意してくれて、そんな匠くんの優しさが嬉しくていつも感謝してるんだけど、今日は栞さんの手前何だか匠くんをこき使っているみたいで、 ちょっと引け目を感じてしまった。
でも栞さんは微笑ましそうな笑顔で、あたしと匠くんを見てくれていた。
「匠さん、ホント萌奈美ちゃんに優しいですよね」
栞さんにそう言われて匠くんは少し顔を赤らめた。
「いっつもなんだよねー。萌奈美ちゃんが帰って来ると必ず飲み物用意してあげるんだから、匠くん」
麻耶さんが混ぜっ返すように言い、匠くんはますます恥ずかしそうだった。人前でも変わらぬ優しさを見せてくれる匠くんが、たまらなく嬉しかった。麻耶さんと栞さんの前だっていうのに、ついつい顔が綻んできちゃうのを抑えられなかった。
「萌奈美ちゃんてば、嬉しそう」
あたしの緩んだ顔を見た栞さんがからかうように言う。匠くんと並んで二人して顔を赤くした。
「改めて、本当に合格おめでとう、萌奈美ちゃん」
栞さんの改まった声が告げた。
「ありがとうございます」
慌ててしゃきっと背筋を伸ばし、栞さんに深々と頭を下げる。
「本当によかったね。匠さんと同じ大学に進めて」
「あ、はいっ。もう、すっごく嬉しいです」
本当に心からお祝いしてくれているのが感じられて、ものすごく嬉しかった。
「栞ちゃんね、萌奈美ちゃんが合格したの知って、どうしても早くお祝いを言いたかったんだって」
麻耶さんが横から教えてくれた。
え、そうなんだ。でも、どうしてそんなに早く伝えたいって思ったんだろ?麻耶さんの話を聞いて心の中でそんな疑問を呟いた。
「え、だって、萌奈美ちゃん、ずっとものすごく頑張ってたの知ってたから、本当に良かったなあって思って、何かどうしても早くおめでとう、って伝えたかったんだもん」
ちょっと恥ずかしげに言い訳する感じで栞さんは言った。
「それで今日連れて来た訳」
そう麻耶さんが明かしてくれた。
そうだったんだ・・・思ってもみなかった真相に栞さんを見つめた。
視線が合った栞さんは少しはにかむような笑顔を浮かべた。
「本当はこんな特別な日に押しかけるべきじゃないのかなって思いもしたんだけど・・・ごめんね」
申し訳なさそうな声だった。つい直前まで疎ましい気持ちを胸の中に秘めてたあたしは、慌てて頭を振った。却ってあたしの方こそ謝らなくちゃいけなかった。
あたしが口を開くより早く、麻耶さんの軽い口調がリビングに響いた。
「いーのよ、全然気にしないで。年がら年中、年中無休、二十四時間営業でアツアツ、ラブラブなんだからさー、たまーにお邪魔虫したってバチは当たりゃしないって」
やってられないって言わんばかりの麻耶さんの発言に、栞さんはくすくす笑った。それは確かにその通りですね。なんて、笑いながら栞さんの目は語っている。
「でも、だからってバレンタイン当日って、ちょっと意地悪過ぎませんでした?」
「偶々よ、偶々。別に他意はないから」
申し訳なさそうに言う栞さんに対して、しれっ、とした調子で全く少しも悪びれる様子のない麻耶さんが応じる。
絶対嘘でしょ?他意ありまくりだよねっ。確信を持って胸の中で言い返した。
「それにねー、何事も無かったら盛り上がりに欠けるじゃない。逆境や障害があってこそ燃えるし、特別な一日になるってもんでしょー?あたしはマンネリ打破に一役買ってあげてるのよ」
麻耶さんはそれこそ却って感謝して欲しいわね、位の尊大さで言い放った。・・・麻耶さん、だから去年、今年って二年連続であたしと匠くんの聖(セント)バレンタインデーを邪魔したんですか?恨みの籠った眼差しで麻耶さんを見据える。
「という事で、少し早いんだけどこれは萌奈美ちゃんへの進学祝い」
そう言って栞さんは脇に置いていた紙袋から、包みを取り出してあたしの前に差し出した。
「えっ・・・」
ちょっとびっくりしながら慌てて首を横に振った。「そんな、えっと、いただけません」
遠慮しようとするあたしに、笑顔の栞さんが小さく首を横に振る。「どうか受け取って。あたしからの気持ち」
「でも・・・」
躊躇うあたしに、ねっ?って栞さんは柔らかく微笑んだ。
僅かだって栞さんが来たのを疎ましく思った感情が、余計に受け取るのを躊躇わせた。
戸惑いながら匠くんに視線を移したら、目が合った匠くんは優しい笑顔で小さく頷いた。
匠くんに背中を押されるような気持ちで、あんまり頑なに受け取らないのも、栞さんに失礼に当たるのかなって思った。
「えっと、本当にいただいてもいいんですか・・・?」おずおずと訊ねる。
「もちろん。是非萌奈美ちゃんに受け取って欲しいの」
優しさに満ちた笑顔を栞さんに向けられて、自然とあたしも穏やかな気持ちで笑顔を浮かべることができた。
栞さんからのプレゼントを大切に受け取った。
「あの、開けてもいいですか?」
「うん。早く開けてみて」
掛けられていたリボンをはずして箱を開ける。
わあっ。思わず声が漏れた。とっても綺麗な色使いのお財布が現れた。鮮やかなタータンチェック柄でポップな感じなのに、でもそれでいて上品さもあって。一 目見て、もうすっごく気に入ってしまった。お財布の中に入っていたタグを見て、ヴィヴィアン・ウエストウッドだって分かった。
「素敵。ありがとうございます!」
喜び一杯で顔を綻ばせてお礼を言った。
「良かった。気に入って貰えて」
「はい。色使いがとっても綺麗で、すっごく可愛いし、もう、一目見てお気に入りになっちゃいました!」
「ヴィヴィアン・ウエストウッドのダービーっていうシリーズなの。沢山色のバリエーションがあって迷っちゃったんだけど、萌奈美ちゃんにはこの色が一番合うかなあ、って思って」
栞さんが選んでくれたのはダービーシリーズの「ニューエキシビション」っていうカラーバリエーションだった。
「はいっ。とっても可愛くて、でも上品な感じもあって、ちょっと大人っぽくも見えるかなあ」
「うん。大学生になった萌奈美ちゃんに似合うんじゃないかなって思う」
栞さんが大学生のあたしをイメージして選んでくれたのがすごく嬉しかった。
「ヴィヴィアン・ウエストウッドってデザインがポップだし、色使いがとっても綺麗だし、いいですよね」
あたしがそう聞いたら栞さんも頷いてくれた。
「うん。あたしも大好き」
栞さんとはファッションの好みが結構合うような気がする。穏やかで可愛くて優しくて、あたしの憧れの女性だった。あたしも二十台になったら栞さんみたいな素敵な女性になれるかな?なれたらいいな。なりたいな。なんて、密かに思ったりしてる。
「本当にありがとうございます。大切に使います」
あたしの言葉を聞いて栞さんは嬉しそうに頷いた。
「喜んで貰えて、ホントに良かった」
ほっとした声で呟いた栞さんに、麻耶さんが「良かったね」って声を掛けた。
「プレゼント選びに二時間も付き合わされた甲斐があったってもんよ」
ぼやきめいた麻耶さんの発言に、栞さんは慌てて「麻耶さん!」って咎める声を上げた。
「もうさあ、悩みまくっちゃってさあ、栞ちゃん。何がいいかなあ、ってデパートのフロアをウロウロ、ウロウロ、エスカレーターを上がったり下ったり。いや、もう、付き合わされる身にもなって欲しいもんだったわよ」
麻耶さんの意地悪な発言に、栞さんは恥ずかしそうな顔で言い訳した。
「だって、何贈ったら喜んでもらえるかなあって、本当にすっごく考えちゃったんだもん」
「その甲斐あったじゃん。萌奈美ちゃんにこんなに喜んでもらえて」
一転して優しい笑顔で言う麻耶さんに、栞さんは一瞬戸惑いの表情を浮かべたけど、すぐに、
「はい」って頷いて微笑んだ。
あたしもこんなにあたしのことを思ってくれる栞さんに、感謝の気持ちでいっぱいになったし、栞さんの好意がものすごく嬉しかった。
幸せな気持ちであたしと栞さんが笑い合っていたら、「良かった良かった、これで付き合わされたあたしの苦労も報われるってモンよ」なんて、麻耶さんがわざ とらしく肩を叩いて見せて、しっかりオチを付けるのを忘れなかった。相変わらずの麻耶さんの様子に、もう一度あたしと栞さんは視線を交わして、くすくすと 笑い合った。

「それでは、進学祝いも無事贈り終わったところで、次に進みたいと思います」
鹿爪らしい面持ちで麻耶さんが厳かに宣言した。何のことかって思って麻耶さんの様子を窺った。
「続きましてプログラムナンバー2、バレンタインチョコの進呈に移らせていただきます」
司会進行役よろしく麻耶さんが告げた。そしてすかさず匠くんの前のテーブルにどんっ!って如何にも高級そうな箱を載せた。
「はいっ、これバレンタインチョコねっ。匠くん」
完全に油断していた。虚を衝かれて呆気に取られているあたしを見て、麻耶さんはニヤッと口元を歪めた。
な、何すんのよーっ!ずるいっ。不意打ちじゃないのよーっ!胸の中で抗議の叫びを上げる。
目を剥いて睨みつけるあたしの様子に、してやったり、とでも言いたげに満足げな麻耶さんだった。
「あ、じゃ、あたしからもこれ・・・」
静かな声が聞こえた。視線を移すと匠くんにチョコの箱を差し出す栞さんの姿があった。し、栞さんまでー・・・
匠くんは、あ、とか、え、とか、うろたえた後、何処と無くおどおどとした様子で栞さんのチョコを受け取った。
「・・・どうもありがとう」
そうお礼の言葉を告げながら、匠くんの視線がちらりとあたしの様子を確かめる。むくれているあたしに気付いて、匠くんの目に怯えの色が浮かぶ。
自分の手から匠くんの手に無事チョコが渡ったことに、ほっとした感じで栞さんは顔を綻ばせた。
信じられないって顔で見つめるあたしに気付いた栞さんが、申し訳なさそうな笑顔を浮かべた。
「やっぱりバレンタインだし、手ぶらっていうのも何だか気が引けて」
何処となく言い訳めいた説明だった。
「そうそう。世間はバレンタイン一色だかんね。周囲でもどんなチョコ買うかって話題ばっかだしねー。デパート回ってても特設のチョコレート売り場がどーん!って場所占めててさ、こりゃやっぱ買わない訳にはいかないって思っちゃう訳よ」
栞さんの気持ちを代弁するように、麻耶さんが滔々とした調子で語った。
だからって、じゃあ、匠くんに買わなくたって、幾らだってお仕事でお世話になってる人とか、友チョコとか贈る相手がいるんじゃないんですかっ?そう険しい視線で問い詰めた。
「まあ、恒例ってことで。それとも慣例?慣習?」
何が?ぜんっぜん意味が分からなかった。
首を傾げながら自問する麻耶さんに白い目を向けた。
「栞ちゃんも今年で三年目なんだもんね」
もはや匠くんにバレンタインチョコをあげることは、恒例の年間行事ででもあるかのように強調する麻耶さんだった。
「一緒にあげよう、って麻耶さんが誘ってくれたの」
栞さんが悪戯めいた表情を浮かべて言う。
だからって同調することないじゃないですかーっ!・・・思わず心の中で吼えていた。
匠くんへのチョコレートは麻耶さんがノイハウス、栞さんがパスカル・カフェっていう、どちらも初めて聞くブランドだった。
「ゴディバとかピエール・エルメとかジャン・ポール・エヴァンとか、定番どころも定評があってもちろん美味しくていいんだけどさー、ちょっと初耳ってブランドの方がサプライズ感高いしねー」
麻耶さんがそんなことをのたまった。義理チョコにサプライズ感なんかいらないでしょっ?箱の中には二人ともしっかり赤いハートマークのチョコが入ってるし。どー見たって滅茶苦茶本命チョコにしか見えないんだけどっ?そう問い詰めたい気持ちだった。
「萌奈美ちゃんも一緒に食べてね」
麻耶さんが取ってつけた調子で言った。言われなくたってそのつもりだよっ。特にハートマークのチョコなんて、絶対匠くんに食べさせないんだからねっ。
後で匠くんと二人で、麻耶さんと栞さんがくれたチョコを食べさせてもらった。やっぱりメチャメチャ美味しかった。口の中で溶けるチョコレートの余りの美味しさに、不本意ながら至福を感じてふにゃんと顔を緩めてしまったあたしだった。

納得できないものを感じて、まだむっつりとしているあたしを一顧だにすることなく、麻耶さんの発案で夕御飯を食べに行くことに決まった。
「栞ちゃん、『Something』と『おくどさん』どっちがいい?」
麻耶さんに聞かれて栞さんは少し思案の後、「おくどさん」の名を挙げた。
「美味しいですよね『おくどさん』。ああいう和食のお店ってあんまりない気がする」
あたしも「おくどさん」は大好きだった。栞さんの言葉に心の中で大きく頷く。
お店は平日のせいか、ご飯時ではあったけどすぐに席に着くことができた。麻耶さんと栞さんが並んで座り、その向かいにあたしと匠くんが並んで座った。それ ぞれ二人で一つずつのメニューを覗き込んで料理を選んだ。このお店の料理って美味しくて、注文する時いつも迷ってしまう。あれも食べたいしこれも食べたい し、でもそんなに食べたら大変なことになっちゃうし・・・いつもメニューを見て注文するお料理を決めている時は、楽しくもあり悩ましくもあった。毎度のこ とだけど、幾ら食べても太らないといいのになあって、ホントに真剣に思っちゃう。
殆どあたしと麻耶さんと栞さんの三人でオーダーを決めた。匠くんはあたしがこれ食べる?って聞くのに、うん、いいよ、って頷いてばっかり。匠くんがこんなだから余計にあたしが食いしん坊だって気がするんだよね。・・・実際、食いしん坊なんだけど。
お店お勧めの特製コンビーフ、こだわりの角煮と煮玉子、和牛のたたき特製甘醤油、五穀ひじき、生湯葉と三つ葉のおひたし、揚げ茄子の煮びたし、自家製アン チョビドレッシングのグリーンサラダ、あったか野菜とベーコンの彩りサラダ、栗かぼちゃと白菜の重ね蒸し、農園直送野菜・和のバーニャカウダ、鮪のホホ肉 の山椒焼き、キャベツの塩昆布和え、豚舌の味噌漬け焼き・・・ご飯ものは匠くんが所沢ハッピー卵の親子丼、麻耶さんと栞さんが高菜と揚げじゃこのまぜごは んを二人でひとつサーブして、あたしは石竈で炊いたご飯セットを頼むことにした。これだけ他のお料理も食べてご飯も一人で一人前食べるのはちょっと食べ過 ぎだったので(食べようと思えば食べられちゃうんだけど)、匠くんと半分こにした。とは言っても匠くんの親子丼もしっかり味見させて貰ったりしたんだけ ど。
食いしん坊の悲しい性と言うべきか。「おくどさん」の美味しいお料理をお腹一杯になるまで楽しんでいたら、機嫌の悪いのも納得いかない気持ちも何処かに消し飛んでしまった。・・・あたしって単純。
それにしても麻耶さんがよく食べるのはいつものことながらだった。栞さんも見た目小食そうに見えるのに、意外と沢山食べるんだよね。それであのスタイル維 持できるんだから、麻耶さんといい栞さんといい、絶対ずるいっ!そんな羨ましげな視線を投げかけていたら、あたしの視線に気付いた栞さんがちょっと頬を赤 らめた。
「あっ、もしかしてよく食べるなあって思ってる?」
慌てたように栞さんに聞かれた。
「あっ、いえっ」あたしも栞さんに失礼だったって思って、慌てて頭を振った。
「栞ちゃん、割りと食べるんだよね」麻耶さんが追い討ちをかけるように言う。
「あっ、麻耶さんひどいっ。麻耶さんにだけは言われたくないのに」
ちょっと頬を膨らませて栞さんが抗議する。それはあたしも全く同感です。
「麻耶さんと一緒だとつい食べちゃうんですよ。普段はこんなに食べないのに」
栞さんが言い訳するように言った。
「麻耶さんと食事するのって本当に楽しくって、麻耶さんいつも美味しそうに食べるし、だから、何だか食が進むっていうか」
あっ、栞さんの気持ちすごく分かる。胸の中であたしも同意してた。本当にそうなんだよね。あと付け加えさせて貰えば、麻耶さんと一緒に食べてると、何だか自分までどんなに食べたって大丈夫って勘違いさせられちゃって、ついつい食べ過ぎちゃうんだよね。気をつけなくっちゃ。
「それはお褒めの言葉と受け取っておくわ」
麻耶さんがにっこりと笑って答えた。
「でも、麻耶さんも栞さんも、一杯食べても全然気にしなくていいんだもん。何かズルイ」
羨ましげな視線を二人に送りつつ愚痴を零した。
「萌奈美ちゃんだって全然大丈夫じゃない」
何言ってるのって顔で栞さんに言われた。そんなこと全然ないんだから。
「これでもいつも気にしてるんですよ」
「まあ、確かに高校生の頃って体質的に太りやすいっていうか、体重増えやすいかもね」
あっ、麻耶さんひどいっ。そんな意地悪なこと言ってっ。恨みがましい視線を麻耶さんに向ける。
「でも、どお?着痩せして見えるけど、匠くん、萌奈美ちゃんって肉付きいいの?」
ニヤニヤ笑いを湛えた麻耶さんが、矛先を匠くんに向けた。
唐突に話題を振られた匠くんはギョッとして狼狽している。何でオレに振るんだよっ?そう言いたそうな顔してる。
「何がだよっ?」
しらばっくれる匠くんに、麻耶さんは更にチェシャ猫めいた笑いを強めた。
「だって、いつも確認してるんでしょ?見て触って」
何てこと聞くのよお!顔を真っ赤にしながら心の中で抗議した。
栞さんも頬を赤くして困ったように俯いている。
「知るかっ」匠くんが投げ出すように答える。
「んなこと言って、昨日だってさんざん確かめたんじゃないの?」
にたあっ、って聞こえてきそうな感じに口を歪めて再び聞く麻耶さんに、匠くんはもはや無視を決め込んだみたいだった。
「あ、そうか」
麻耶さんははたと気がついたように声を上げた。
「萌奈美ちゃんは心配ないか。だってしょっちゅう激しい運動してるもんねえ」
何わざとらしく言ってるんですかっ。もうっ。知らないっ。
匠くんに倣って、あたしも栞さんも知らんふりを決め込むことにした。
「あれ?ねえねえ、何でみんな黙りこくってんの?」
あたし達三人の顔を、これまたわざとらしいまでの演技をして見回す麻耶さんを、あたし達は黙殺した。無視無視。三人で黙々と箸を進めた。
最後にやっぱりデザートははずせなくて、あたしと麻耶さんが狭山ほうじ茶のシフォンケーキ、栞さんが黒蜜ときなこのとろけるチーズプリン、匠くんがお付き 合いって感じで季節のアイスクリームを頼んだ。麻耶さんと二人で栞さんにチーズプリンを味見させて貰って、あたしは匠くんとも味見し合った。
栞さんが匠くんに「匠さんも味見します?」って勧めてみたんだけど、匠くんは取り付く島もなく「いや、いい」って即座に断った。栞さんは壁を作られてるみ たいで、ちょっとがっかりした表情を浮かべてた。麻耶さんはまあ当然だよね、って顔でシフォンケーキを口に運んでいる。相変わらず照れ屋なんだから。で も、匠くんはあたしとしかこんな風に味見し合ったりしてくれなくて、そんなところがあたしには嬉しかったりする。あたしにだけ特別なんだよね、匠くん。す ごく得意げな気持ちで思った。
食べ終えてお店を出て、お腹も気持ちも目一杯に満たされて幸せで、吹き付ける北風は冷たかったけど、そんなのへっちゃらって感じるくらい内側はぽっかぽか に温かかった。麻耶さんと栞さんと三人で並んで通りを歩いた。マンションのエントランスからエレベーターホールへ歩く間も、ずっとお喋りしっ放しだった。 匠くんは所在なさげにあたし達の後を一人ポツンとついて来てた。

部屋に戻って来て、麻耶さんが栞さんに向かって言った。
「じゃあ、遅くなっちゃうとゆっくり休めないし、そろそろ行こうか?」
「そうですね」栞さんも頷き返した。
何のことだろうって思って二人をまじまじと見つめる。
視線に気付いて麻耶さんが説明してくれた。
「明日は早い時刻の新幹線で移動しなきゃいけないのね。だから今夜は大宮に泊まることにするね」
えっ?てっきり麻耶さんと栞さんは今晩はマンションに泊まるもの、とばかり思ってたあたしは耳を疑った。確か麻耶さん、月曜は栞さん泊まってくって言ってたよね?
あたしの心の中の疑問の声が聞こえてしまったのか、可笑しそうに麻耶さんは笑っている。
「あたし、“月曜は栞ちゃんが泊まるから”とは言ったけど、“家に”とは一言も言わなかったわよ」
勝手にあたしが誤解したと言わんばかりだった。あんぐり口を開けて麻耶さんの言葉を聞いていた。
「あたしも鬼じゃないから。お二人さんのアツアツのバレンタインナイトをお邪魔するような、血も涙もない仕打ちする筈ないし」
そう麻耶さんは言ったけど、果たして本心なのか、ちょっと疑ってしまいたくなるのは無理からぬことだった。
「でもそのお陰で今、嬉しさ倍増、でしょ?」
得意げな顔で麻耶さんに聞かれた。でもそこは素直に認めてあげようとは思わなかった。何を今更って感じで、ふんっ、って鼻息荒くそっぽを向いた。
あたしと麻耶さんのやり取りに、栞さんがくすくす笑っていた。
そして改めて思った。栞さん、あたしに合格のおめでとうを伝えたくて、進学祝いのプレゼントを早く渡したくって、それで明日朝早いのに今夜わざわざこの部屋まで来てくれたんだ。そう思って、たまらなく嬉しくなった。とても幸せな気持ちに包まれた。
あとはそれと多分、三年目で恒例になった匠くんへのバレンタインチョコのプレゼントっていうのも、幾分かは理由として間違いなくあったんだろうな。
それから間もなく、麻耶さんと栞さんは出掛けて行った。あたしと匠くんは武蔵浦和駅の改札まで二人を見送った。
別れ際、また会おうね、って栞さんに誘われた。もちろん二つ返事で頷いた。受験から解放されたからいつだって大丈夫ですよ、って伝えた。
「でも、大学始まったら色々忙しいんじゃないのかな?今迄より通学だって時間掛かっちゃうだろうし」
栞さんの指摘に、そうなのかな?ってちょっと思った。でも卒業して入学式を迎えるまではなーんにもない筈だから、その時期に絶対会いましょう、って約束した。栞さんも嬉しそうに頷いてくれた。
「そうだ。一度、萌奈美ちゃん、あたしの家に来ない?」
栞さんから自宅へのお誘いを受けた。突然のことでちょっと戸惑った。
「大学通うようになったら私服も結構必要になるよ。毎日同じ格好って訳にもいかないし」
成る程。栞さんの話に相槌を打つ。
「あたしの服、良かったら貰ってくれないかな?あたしと萌奈美ちゃん、サイズ変わらないくらいだし。最近じゃ、ちょっと年齢的に可愛過ぎちゃうかな、って着てないのも結構あって、萌奈美ちゃんだったらよく似合うと思う」
願ってもない提案だった。栞さんの着てる服っていっつも可愛くって素敵で、好みがかなり被ってるのかなって前からちょっと思ってたんだよね。
はいっ。是非お伺いさせてくださいっ。勢い込んで返事をした。
笑って頷いた栞さんは「じゃあ日にちはまた今度電話で相談しようか」って言った。春休みの楽しみが一つ増えた。他にも春休みには匠くんと二人でUSJに行 く予定だし、結香や誉田さん達お馴染みのメンバーでディズニーシーへ行く約束をしてるし、夏休みにテニスをしたメンバーでテニス合宿に行く計画もあった。 この合宿には麻耶さん、栞さんも参加予定で、あたしはテニスは苦手でそれ程テニス自体は楽しみではないんだけど、春音、千帆、結香、それから九条さん達匠 くんのお友達っていった親しいメンバーで泊りがけで出掛けられるのが、すごく楽しみだった。卒業を迎えるのは嬉しい反面、正直淋しい気持ちもあるけど、そ の後待っている春休みの予定は、もう待ち切れないくらい楽しみなことばっかりだった。

部屋に帰って来たあたしの目に、リビングのテーブルの上に置かれた、麻耶さんと栞さんが匠くんに贈ったバレンタインチョコが止まった。知らず眉間に皺が寄 るのを抑えられない。これはもう条件反射とでも言うべきか。理屈や論理じゃなかった。麻耶さんも栞さんも心から大好きだし、あのチョコが正真正銘100 パーセント義理チョコだって分かってる。だとしても、よく分かってたとしても、例え義理チョコだろうと何だろうと、やっぱり匠くんへのバレンタインチョコ なんて許せないっていうか、認めがたい気持ちで一杯になってしまう。匠くんはあたしだけのものなんだからって思ってしまう。この自分の中に潜む独占欲って いうか、傲慢な気持ちに遭遇する度に、いつも深い溜息が口を吐(つ)いて出てしまう。
それからあたしは、鞄の中にしまってある潮田さんから預かったチョコのことを思い出し、鞄から出して来て匠くんに差し出した。
「これ、潮田さんから預かったの」
匠くんは最初困惑した表情を浮べ、そして匠くんの眼差しがあたしの顔色を覗き込んだ。
「これね、匠くんのイラストへのバレンタインチョコなんだって。潮田さんが言ってた。あの、ね、匠くんへのバレンタインチョコだったらたまらなく嫌だし、 絶対何があったって預かったりしないけど、匠くんのイラストへのラブコールだったら百歩譲って仕方ないかな、って思う。特に潮田さん、匠くんのイラストの 熱烈なファンで、その熱い気持ちをあたしよく知ってるの」
あたしの話を聞いて匠くんは「うん・・・そうなんだ」って優しく相槌を打った。
あたしの手から潮田さんのチョコを受け取る匠くんに、あたしは潮田さんのチョコを取りに行った時に一緒に持ってきて、密かに背後に隠し持っていたあたしからの手作りチョコをおずおずと差し出した。
「これ、あたしからのバレンタインチョコ」
匠くんが喜んでくれるのはもちろん分かってるけど、でもやっぱり匠くんの反応が気になって、言いながらチラリと匠くんの表情を窺った。
「ありがとう」
お礼を告げる匠くんの笑顔が、麻耶さんの時よりも栞さんの時よりも潮田さんの時よりも明らかに嬉しそうに見えるのは、決してあたしが自分勝手に頭の中で補正した妄想や勘違いじゃないって思う。
「すごく嬉しいよ。萌奈美は何時くれるのかなあって思ってた」
匠くんが言った。
「本当?」
匠くんは笑って頷いた。
「うん。待ち遠しかった」
そんな滅茶苦茶嬉しいことを匠くんが言ってくれて、あたしの顔にはもうどうしようもないくらいにっこにこの、満開の笑顔が咲いた。
「そんな風に言ってもらえて、すごく嬉しい」
「開けてもいい?」
匠くんに聞かれて「もちろん。早く開けてみて」って頷いた。
丁寧にラッピングを開けた匠くんは、箱の中を見て目を瞠った。
「すごい。これ、作ったの?」
匠くんへの計り知れないくらいの愛と感謝とをぎゅうぎゅうに詰め込んだ、自信満々のバレンタインチョコだった。匠くんが驚いてくれてすっごく嬉しかった。
「うん。春音と千帆と結香と、それから香乃音とで、みんなで一緒に作ったの」
匠くんに引っ付いて甘えながら打ち明けた。
「いや、でもホント、マジですごい。売ってるヤツ以上の出来栄えだよ」
匠くんがそう言ってくれて、もう、やったあ!って胸の中で両手を挙げてバンザイしてた。
「ね、食べてみて」
匠くんを促す。
「でも食べちゃうの勿体ないなあ」
食べるのを惜しんでそう匠くんが言ってくれて、また胸の中に嬉しさが溢れる。
「匠くんに食べて欲しくて一生懸命作ったんだよ」
あたしがそう主張したら、匠くんは嬉しそうな笑顔でうん、って頷いた。
「どれ食べる?」
「えーっ、どれ食べようかなあ?滅茶苦茶迷うなあ。どれも美味しそうだし、食べるの勿体ないし、迷うなあ」
急かすように訊ねるあたしに、匠くんは心から迷ってる様子で、うーん、って唸り声を漏らして、箱の中に詰められたチョコレートを凝視している。
「じゃあ、これから食べてみようかな」
匠くんはホワイトチョコでコーティングしたオレンジリキュールのガナッシュを選んだ。「食べさせてあげるね」って言って、匠くんの指差したチョコを取り出して、匠くんの口へと運ぶ。
「はい、あーんっ」
あたしが言うのに合わせて、匠くんはちょっと照れつつ口を開けてくれた。
チョコを頬張った匠くんは、少しの間味わうように無言のまま口を動かした。それから驚いたように目を丸くして「美味しい」って声を上げた。
匠くんのその言葉があたしの胸を、たまらなく温かい気持ちで満たしてくれる。チョコレートに負けないくらい甘い幸せが、あたしをきゅうっ、て包んでくれる。
「すごい美味しい。こんな美味しいチョコ食べたの生まれて初めてだよ」
ちょっと大袈裟にも聞こえたけど、でも匠くんへの溢れる愛情を目一杯詰め込んだ匠くん専用のチョコだもん。あたしの愛情っていう魔法のエッセンスがかかっ てて、匠くんにはとびきり美味しく感じられるのかも知れないね。匠くんが最高の褒め言葉を口にしてくれて、あたしの幸せもマックスで、心の針が振り切れそ うだった。
「良かった。匠くんにそう言って貰えて、すっごく嬉しい」
「うん。こんなとびっきり美味しいチョコを貰えて僕もすごく幸せだよ。本当にありがとう」
とても嬉しそうな匠くんの笑顔に、ハチミツみたいに濃厚で甘い幸せがあたしの心を一杯にする。
この幸せな気持ちを匠くんにも伝えたくて、きゅう、って匠くんを抱き締める。匠くんも一度きゅっ、って抱き締め返してくれて身体を離した。匠くんを見つめるあたしに匠くんは唇を寄せた。唇が重ねられ、匠くんの唇から甘いチョコの風味が口の中に広がった。
「美味し」
匠くんが唇を離すと、ぺろっ、って唇をひと舐めして味わった。
「うん。すごく美味しい」
そう言って匠くんはまた唇を重ねた。匠くんはチョコとあたしの唇と、どっちを美味しいって言ってるのかな?そんなことをちょっと思いながら、いつもより甘い匠くんとのキスを味わった。
「やっと願ってたとおりのバレンタインの夜が過ごせるね」
思う存分キスを交わして息苦しくなって唇を離して、匠くんに囁いた。
「ん?」
匠くんが何のことって眼差しで見返して来る。
「二人っきりでラブラブな夜が過ごせるね」
そう言い直して、匠くんの唇にもう一度軽くキスをする。
「そうだっけ?」
匠くんは思い当たらないのか首を傾げた。
「そうだよ。去年は麻耶さんがいて、二人っきりでいられなかったじゃない。匠くん、覚えてないの?」
「ごめん」
少し拗ねるように咎めるように言うと、匠くんは素直に謝った。
「今年もまた二人っきりで過ごせないのかなって思ってヤキモキしちゃった」
「ごめん」
ついさっきまでの胸の内を打ち明けたら、また匠くんが繰り返した。ううん、って首を横に振る。怒ってる訳じゃなくて。
「でも、駄目だね、あたしって」
小さな溜息を吐くあたしを、匠くんの瞳が、どうして?って問いかけるように覗き込む。
「あたしの合格をお祝いしに来てくれた栞さんのことも、麻耶さんのことも、心の中で邪魔者扱いしてたの。どうして匠くんと二人っきりで過ごさせてくれないんだろ、って、二人共あたし達のこと邪魔して、って、すごく憂鬱に思ってた。すごく迷惑に思って自分勝手だった」
告白しながら、身勝手な自分がどうしようもなく後ろめたくて落ち込んだ。
「間中さんはともかくさ、麻耶がお邪魔虫なのはいつものことだろ。別に間違ってないと思うけど。実際邪魔者だし迷惑この上ないし、僕もそう思ってるよ」
匠くんがしれっとした口調で答えた。
もう、そんなこと言って。素直に同意したら麻耶さんに悪いなあって思いつつ、苦笑してしまった。
「それに、こんなこと言うのはくれた相手に悪いし、ちょっと憚られるんだけど」
匠くんがちょっと改まった感じで前置きするのに相槌を打つ。
「萌奈美以外からのチョコなんていらない。萌奈美のチョコだけあればいい。萌奈美から貰えるのだけ楽しみにしてるし、すごく期待してる」
うわあ。匠くん、面と向かってすごいこと言ってるって分かってる?聞いてるあたしの方がもう照れちゃうし気恥ずかしいし、どういう顔していいか分かんなくなっちゃうよ。
匠くんの滅茶苦茶嬉しい言葉に真っ赤になって照れながら、だけど心の中は喜びで満ち満ちて、思わずはしゃぎまくりたい気持ちだった。
「もう最高に幸せ!」
ぎゅう、って匠くんに抱きつきながら、叫ぶように伝えた。匠くんからも、ぎゅう、って抱き締められた。僕も最高に幸せだよ。そう言ってくれてるみたいだった。ホワイトデーのマシュマロよりもふわふわに柔らかくて、優しくて甘い幸せに包(くる)まれる。
心待ちにしていた最高のバレンタインデーになった。でも、幸せなバレンタインの夜はまだまだ長ーく、たっぷり時間があった。
えへへ。この後過ごす匠くんとの二人っきりの時間を思い描いて、匠くんの温もりに頬を摺り寄せながら、ついつい顔が綻んできちゃうあたしだった。
 


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