【 FRAG-ILE-MENT 】 ≪ Happy ,Happy New Year! 第2話 ≫

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ちょっとどきどきしながらリビングへと足を踏み入れた。
最初にこっちを向いていたパパが気付いて、おっ、という感じで驚いた顔をした。それから香乃音が気付いてぱっと笑顔を見せて声を上げた。
「あっ、萌奈美ちゃん」
あたしの視線は匠くんだけにずっと注がれていた。香乃音の声に匠くんが振り返った。その瞬間すごく緊張した。
振り向いた匠くんはあたしを見て茫然としたようだった。声もなくあたしのことを見つめていた。
「どうかな?匠くん。似合う?」
黙っている匠くんにおずおずと声をかけた。
「萌奈美ちゃん、可愛い!」香乃音がはしゃいだ声で言った。
匠くんは、はっとしたような感じで我に返ったみたいで、それからどぎまぎしながら、こくこくと頷いた。
「う、うん。すごくよく似合ってる」
声が上ずっているように聞こえた。そして少し間をおいてから、躊躇った末にって感じで匠くんは言ってくれた。
「すごく、綺麗だよ」
匠くんのその言葉を聞けて、本当は飛び跳ねて匠くんに抱きつきたい気分だったけど、みんなの前だったので何とか思い留まった。
「本当?良かった」
顔を綻ばせて答えた。晴れ着の柄がよく見えるように両袖を広げて見せた。
「よかったわね萌奈美。匠さんに綺麗だって言って貰えて、着た甲斐があったってものよね」
後から入って来たママに言われ、少し気恥ずかしくて顔を赤くしながら「うん」って頷いた。
「ありがとう、ママ」
ママはあたしを見てにっこり笑うと軽くウインクをした。作戦大成功、ってメッセージだった。
ママはまだあたしの着物姿を見たことのない匠くんに晴れ着姿を見せてあげたら、って言ったのだった。
「晴れ着姿の萌奈美を見たら、匠さん間違いなく萌奈美に惚れ直しちゃうわよ」
そう言ってママは巧みにあたしをその気にさせた。
でも、少し口惜しいけどママの思惑どおりだった。
嬉しさに満面の笑みを浮かべながら匠くんの隣に座った。横目で伺うと匠くんはまだちょっと落ち着かない様子だった。つい顔がにやけそうになってしまう。
「ふーん」
聖玲奈があたしと匠くんをまじまじと見ながら、少し意外そうに声を出した。
何?って問うように聖玲奈に視線を向けた。
聖玲奈はニヤつきながら口を開いた。
「今迄あたし、てっきりお姉ちゃんが一方的に匠さんにぞっこんなのかと思ってたんだけど、そうじゃなかったんだ。匠さんもお姉ちゃんにメロメロだったりする訳なのね」
みんな・・・って言うのはパパとママと香乃音だけど、目を丸くして聖玲奈の話を聞いてて、それから聖玲奈の発言を確かめるかのように、あたしと匠くん二人の方へ視線を移した。
あたしも匠くんもみんなの注目を浴びて焦りまくった。二人して並んで顔を真っ赤にしていた。
まったく、もお、聖玲奈ってば・・・怒る気も失せてがっくりと脱力したい気分だった。
気になって匠くんの様子を伺ったら、落ち着かない様子であたしの方を見ている匠くんと視線がぶつかった。照れたように、そして困ったように笑う匠くんが何だか可愛くて、あたしも顔を綻ばせてくすくすと笑い返した。

ママが「二人とも晩ご飯食べてくでしょ?」って既に決定事項であるかのように聞いてきて、あたし達はどうしようか?って顔を見合わせたけど、マンションに帰っても特に夕飯の用意もしてなかったし、結局夕飯までご馳走になっていくことにした。
あたし達がそう返事をしたら、ママもパパも本当に嬉しそうな顔をしていた。ほんのささやかなことではあるけれど、何だかちょっと親孝行したような気持ちになった。
夕飯はすき焼きで、食卓に卓上コンロを出してすき焼きをした。阿佐宮家はお正月にはいつもすき焼きを食べるのが慣わし(?)で、奮発して伊勢丹の地下の食 料品売り場のお肉屋さんで100グラム千円以上するようなお肉を買ってくるのだ。霜降りの見るからに上等そうなお肉は甘くて、口の中で溶けてしまってと びっきり美味しかった。
「お肉はたっぷりあるから二人とも遠慮せず食べてね」
ママがあたし達に言い、パパがお鍋にお肉を足した。お正月のすき焼きは何故だかパパが仕切ることになっているのだ。
匠くんに短い時間しか見せられなかったのがちょっと残念だったけど、汚してしまったら大変なので夕食前に晴れ着を着替えておいた。それに着物って帯とか結 構きつかったりするし。すぐ着崩れて来たりするし。長い時間着てるのは結構辛かったりするのだ。だから脱いだときはやっぱりほっとしてしまう。
みんなでお鍋を囲むのも楽しくて、和気あいあいとした雰囲気もあってついつい食べ過ぎてしまい、またしても食べ終えてから、しまった、って思った。わーん!明日からは本気で食べるの控えなきゃ!って胸の中で悲痛な叫びを上げた。
一人心の中で嘆いていたら匠くんがあたしの様子を訝しい顔で見ていた。慌てて、えへへって誤魔化すような笑いを浮かべた。
すっかり夜も更けてからあたし達は暇(いとま)を告げた。
ママとパパは何だったら泊まってけば?って名残惜しそうに勧めてくれたけど、やっぱり帰ることにした。匠くんはちょっとパパ達の気持ちを考えてか、あたし に泊まっていったらって聞いたけど、それで久しぶりの実家に募るような懐かしさを感じてちょっぴり心を動かされもしたけど、でも、もうあたしの中で心の底 から安らげる家(うち)っていうのは、匠くんと一緒に暮らすあのマンションの部屋だった。匠くんの温もりに包まれながら眠るあのベッドがとっても恋しかっ た。匠くんと暮らすあの部屋があたしの居場所なんだって、あたしは感じていた。
だから「ありがとう。でも、やっぱり帰るね」って告げた。あたしの言葉にパパとママは少し淋しそうな顔をして、ちょっぴり胸が痛んだ。思わず「ごめんね」って謝った。
聖玲奈と香乃音も玄関まで見送りに出てきてくれて、四人に見送られながらあたし達は、お正月のせいか何だかいつもよりひっそりと静まった気配の夜の道を、 西浦和駅へと歩き出した。途中あたし達は振り返って、玄関を開けたまままだ見送ってくれている四人に手を振った。笑って見送ってくれているパパ、ママ、聖 玲奈、香乃音に、突然ふっと切なさが募ってきて淋しい気持ちになった。ほんの半年ほど前まであたしが毎日暮らしていた家なのに、何だかすごく遠い場所に なってしまったような気がした。
寂しさに急きたてられて思わず匠くんと繋いだ手にぎゅっと力を込めた。匠くんの手があたしの手をきゅっと握り返した。
心もとない気持ちであたしは匠くんを見上げた。匠くんは優しい眼差しであたしのことを見つめていて、もう一度繋いだあたしの手をきゅっと握り締めると小さく頷いた。ほっと安堵して匠くんに寄り添った。
あたしはもう新しい道を歩き出してるんだ。匠くんと一緒に。匠くんの隣で。振り返ると少し寂しくなるけれど、でも余りある喜びと幸せが匠くんと一緒にいる 今のこの場所には溢れていて、あたしと匠くんが二人で歩いていく先にも沢山溢れているんだ。だからあたしは平気。ちゃんと笑っていられる。
しんと静まり返った夜道を匠くんと二人で手を繋いで歩いていると、ほっぺたが凍りつきそうな冷たい夜気の中でも、心はぽかぽかとした温もりに満たされているように感じられた。
駅に着いたら全く人気がなかった。電車もなかなか来なさそうだった。運良く駅のロータリーに一台タクシーが停まっていて、匠くんがすぐに「タクシーで帰ろ う」って言って、あたし達は停車しているタクシーへと近づいていった。あたし達が傍まで行くとタクシーの後ろのドアが開き、あたし達はタクシーの後部座席 に乗り込んだ。
「えーと、武蔵浦和駅まで」
匠くんが運転手さんに行き先を告げるとタクシーはすぐに走り出し、あたし達は車のシートに身体を預けた。
タクシーの中でもあたしと匠くんはずっと手を繋ぎ続けていた。
短い距離をタクシーはあっという間に武蔵浦和駅に到着した。元日の夜の道は車の数も全然少なかった。マンションのすぐ前で車を寄せてもらってあたし達はタクシーを降りた。
鍵を開けて部屋に入ると真っ暗だった。あたしは部屋のカーテンを閉めてリビングの床暖房をつけ、匠くんはお風呂のお湯を入れに行った。
あたしが烏龍茶の茶葉をポットに淹れてお湯を注いで、匠くんと自分のマグカップをテーブルに運んでいたら、匠くんがバスルームから戻って来た。
「今日はありがとう。疲れたでしょ?匠くん」
長い時間あたしの家族と過ごしてくれた匠くんにお礼を言った。
「いや、大丈夫だよ。楽しかったよ」
匠くんはソファのあたしの隣に腰を下ろして答えた。
あたしに気を遣って言ってくれているんだとしても、人付き合いが大の苦手な匠くんがそう言ってくれてすごく嬉しかった。
匠くんはまだ何か言いたそうな素振りで、あたしが小首を傾げていると意を決したように口を開いた。
「萌奈美の着物姿、すごく可愛かったよ。すごく綺麗だった。あんまり綺麗でびっくりして何も言えなかった」
面と向かって言う匠くんに(それでも照れくさいのか少し頬が赤かったけど)、あたしは恥ずかしくて俯いてしまった。
でも匠くんがそう言ってくれたのがものすごく嬉しくて、顔を上げて匠くんを見つめ返して「ありがとう。すごく嬉しい」って答えた。
「髪を上げてるのも色っぽかった。いままで見たことなかったし」
匠くんは晴れ着に合わせてママが結い上げてくれた髪型を褒めてくれた。
匠くんから「色っぽい」なんて言われて、何だか気恥ずかしくてくすぐったい気持ちになった。匠くんに着物姿を見せられてよかったって心の底から思った。
そのうち着付けを習って、一人でも着物を着られるようになろうかなって思った。そうすれば匠くんに着物姿をもっと見せて上げられるようになるし。
バスタブのお湯がいっぱいになったことを知らせる電子音が流れた。
「ね、一緒にお風呂入ろう」
思い立ってはしゃいだ声で匠くんを誘った。匠くんは戸惑い気味に、え、と声を上げた。
「麻耶さんもいないから、ね?いいでしょ?」
匠くんの腕を取って立ち上がった。匠くんは照れくさいのか何だか渋々といった様子で、あたしに手を引かれるような感じでパスルームへと向かった。
匠くんと一緒にお風呂に入るのは久しぶりでなんだかちょっとわくわくしたし、ときめいたし、どきどきして艶っぽい気持ちになった。
二人でお風呂に入って最初は楽しい気分だけだったのに、お互いの身体を洗いっことかしてる内にじわじわと欲情が高まってきて、もどかしく感じながらお風呂を出て、二人で競争するようにしてベッドに潜り込んだ。
二日連続で激しく愛し合った。しない時はずっとしなくても全然平気なのに、一旦始めるともう他のどんなことも忘れ去ってしまうくらいに夢中でのめりこんで いってしまう。匠くんと二人、ひたすら快楽に溺れることしか考えられなくなってしまう。あたしは匠くんに何度も快感のしるしを吐き出させ、匠くんにあたし は幾度となく絶頂へと導かれた。二人で何時間もずっと愛し合い続けた。

◆◆◆

目が覚めると部屋の中は仄かに明るかった。遮光カーテンの隙間から柔らかい光が差し込んでいた。
驚くほど間近に匠くんの寝顔があった。ぐっすりと寝入っている顔を見つめながら、愛しさが胸に募ってすごく甘い気持ちに満たされた。すごく恋しくて、切な くなるくらい愛しい寝顔だった。あたしをこんなに夢中にさせる。ものすごく大好きで、だからこそ怖いくらいに不安を掻き立てられる存在。
あたしの生きる“意味”だった。あたしは匠くんがいなくちゃ生きていけないんだよ。匠くんがいないと、あたしは空っぽのただの抜け殻に過ぎないんだよ。そ れはあたしにとっての唯一の真理だった。他の人には分からないかも知れない。恐らく分かる筈がない。あたしと匠くんにしか理解し得ない真理なんだ。
匠くんの唇をそっと指でなぞった。匠くんの寝顔がぴくんと震えた。思わずふふっと笑いが漏れる。少し色素の薄い、全然染めていないのに茶色がかった髪に口 づける。それから頬にも。耳たぶをそっと唇で挟んでみる。この人の身体中に隈なくあたしの刻印を刻みたかった。あたしだけのものだって印したかった。凶暴 な独占欲があたしの心を鷲掴みにする。あたしが匠くんがいないと駄目なように、匠くんもあたしがいないと駄目になってしまう位、自分の虜にしたかった。
そっと耳に舌を這わせる。あたしは匠くんの耳に心の中で囁きかけた。まるで眠っている人に催眠術をかけるように。匠くんはあたしだけのものだよ・・・。
「萌奈美・・・?」
突然の声にはっとして慌てて顔を離した。心の中の声が聞こえてしまったのかってびっくりした。ぼんやりとした眼差しで匠くんの開いた瞳があたしを捉えていた。まだ夢うつつのようにとろんとした瞳だった。
衝動に駆られてもう一度匠くんの耳に唇を寄せた。そしてもう一度囁いた。小さく声に出して。
「・・・匠くんは、あたしだけのものだからね」
唇を離して匠くんの瞳を覗き込む。どんな顔をしているかとても気になった。
匠くんはちょっと驚いた顔をしたけれど、すぐに優しい色の瞳で微笑んだ。嬉しそうに。
「そうだよ」
匠くんは頷いた。
「僕は萌奈美のものだよ。そんなの決まってるだろ?」
あたしの身体に両手を回して抱き寄せながら匠くんは言った。
胸がいっぱいで何も言えなくて、あたしからも匠くんの温かい背中に手を回して匠くんの首筋に顔を押し付けながら、こくりと頷いた。
あたし達は素肌のまま強く抱き合った。身体をぴったりとくっつけ合うと匠くんの体温が伝わってくる。こうして肌と肌を触れ合わせているだけでとても気持ちよくてうっとりとしてしまう。あたしの下腹部に匠くんの熱い強張りが押し付けられて欲情を伝えていた。
匠くんの指があたしの背中を辿って下へと移っていく。ぞくぞくとした快感の種火があたしの中で燻ぶり出す。
匠くんの首筋に素早く吸い付き、顔を離してすぐに匠くんの唇を求めた。自分から匠くんの唇を割って口腔に舌を忍び込ませた。匠くんの舌を探し当てて激しく絡みつき、強く吸い上げた。二人の唾液が口の中で交じり合っていくのを感じた。
匠くんの指がお尻を伝って、既にじくじくと愛液を染み出し、ぬめりを帯びているあたしの秘部を後ろから擦り上げた。
「んんっ!」
強い快感に襲われ身体をびくりと仰け反らせながら、舌を絡めたままで匠くんの口中にくぐもった喘ぎを放った。
更に匠くんは指を根元まで突き入れ、濡れそぼった内側の壁を抉(くじ)り立てた。
「んくうっ!んふっ!」
立て続けに一番感じるところを刺激されて、意図しないままにあたしの身体はびくんびくんと跳ねた。
自分を襲う快感を紛らわせるつもりで、あたしも匠くんの欲望の証を握り締めた。熱い強張りはあたしの手の中で大きく脈打った。太い幹全体をゆっくりと擦り上げ、小指の腹で既にぬらつき始めている先端部をくすぐるように刺激した。
声にならない喘ぎを上げて、匠くんの舌が絡みついているあたしの舌に強く吸いついた。匠くんの腰がびくんと引かれる。匠くんの硬く反り返ったものを握り締 めたまま逃がさず、早い動きで摩擦を加えた。匠くんの強張りの先端から滲み出した粘液でたちまちあたしの手の平はぬめりに塗れた。強張りの先端から根元ま で全体にぬめりを纏いつかせるようにして、ぬるぬるとそそり立ったものを擦り立てた。
二人で競い合うかのようにお互いの一番感じる部分を激しく責め立てた。強く身体を押し付けあいながら、間段なく強い快感に襲われ二人してびくびくと身体を躍らせた。
分泌した愛液に塗れた匠くんの指が、あたしの熱くぬめった膣にリズミカルに出たり入ったりを繰り返す。抜かれる時は指の腹であたしの中の襞を擦り上げ、入ってくる時は根元まで深く埋まりあたしの奥深くを抉った。
たまらなくなって匠くんから唇を離し、恥ずかしげもなく大きな声を上げた。
「あはあっ!やあっ!あっ、ああんっ!はあっ、いいっ!」
ぐちゅぐちゅといやらしい音を響かせながら、匠くんの指が激しくあたしの膣を出入りしている。その光景をきつく閉じた瞼の裏に思い浮かべながら、急きたてられるように昂ぶっていった。
「あっ、ああっ!だめえっ!すごいのっ!匠っ、くん!だめなのっ!ねえっ、匠くんの、入れてっ!匠くんのでっ!イキたいっ!」
急速に迫り来る絶頂の予感に叫ぶように懇願した。
あたしの言葉に弾かれるように、匠くんはあたしを責め立てていた指を引き抜いて身体を起こした。快楽への階段を上り詰める途中で置き去りにされてしまったような切なさに、潤んだ瞳で匠くんを見つめ返した。
匠くんはベッドサイドに置いてあった箱からスキンの入った袋を取り出して破き、中身を取り出し素早く自分のものに装着した。その動きを欲情に濡れた眼差しで期待を込めてじっと見つめていた。
匠くんが横たわったあたしに覆い被さって来て、あたしを見下ろして囁いた。
「入れるよ」
「うん」歓喜に顔を輝かせながら、もう少しも待ちきれずに自分から求めた。両手を差し伸べて告げた。
「早く来てっ」
「萌奈美っ!」
切なそうに一瞬顔を歪めた匠くんは、あたしの名を叫んであたしに圧し掛かって来た。
熱く疼いているあたしの恥部に強く押し付けられる硬い感触があった。思わず息を飲んだ。
匠くんがあたしの身体に両手を差し込んで強く抱き締めて来て、その瞬間、陰唇を割って熱くぬかるんだ膣をいっぱいに押し広げながら突き入って来る、焼ける ように熱い強張りの感触を味わっていた。そして同時に太い幹に内側の襞をずるずると擦られて、言葉にならないすさまじい快感が下腹部から脳天へと突き抜け て行った。
「ああっ、あーっ!」
抑えようもなく自分の口から恥ずかしいほどの音量で濡れた喘ぎ声が放たれた。
匠くんは躊躇なく一気に腰を沈め、硬くそそり立った匠くんのものは、その根元まであたしの中に埋まった。下腹部をぴったりとくっ付けた匠くんは最後に強く腰を突き入れた。ずん!あたしの身体の奥深くを匠くんの先端が突き上げた。
「ひっ、ああんっ!」
身体の奥を強く突き上げられて、その瞬間、鋭く重い快感に貫かれて身体を仰け反らせて身悶えた。
匠くんは両手で自分の体重を支えながら腰を引いて先端部分を残して強張りを引き抜いた。引き抜かれていくペニスに内側を擦り立てられていく快感に、あごを突き出して喘いだ。
「あくうっ、あっ、ああっ!」
強張りを半ば引き抜いたまま匠くんは動きを止めていた。匠くんは張り詰めたきつい顔であたしを見下ろしていた。ペニスを引き抜かれてぽっかりと虚ろになっている膣を、匠くんの熱い強張りで満たして欲しくて切ない眼差しで訴えた。
「・・・萌奈美は僕のものだ」
擦れた声で匠くんが言った。あたしに知らしめるような匠くんの言葉だった。
胸にこみ上げてきた想いに弾かれて、叫ぶように答えていた。
「そうだよ!あたしは匠くんのものだよっ!だからっ、匠くんのであたしの中をいっぱいにしてっ!」
匠くんから離れられなくなるように、あたしの中の奥深くまで匠くんの熱い強張りで貫いて!あたしの身体に匠くんが与えてくれる快楽を刻み付けて!匠くんなしで生きていけなくなるように、匠くんの虜にしてよ!
声にならない言葉でそう願った。
あたしの願いを叶えるように、匠くんは深く腰を沈めてあたしを奥深くまで一息に貫いた。
「あああーっ!」
叫ぶような喘ぎ声を上げながら、全身を貫く快感に身悶え、匠くんにしがみついた。
匠くんもあたしを強く抱き締めながら、腰をずんずんと突き出し根元まで埋まったペニスを更に深くまで突き立てた。
匠くんのもので膣をいっぱいに塞がれながら、奥深くを激しく突き上げられて、頭を振って惑乱した。もっと奥深くまで匠くんのいきり立ったものを迎え入れようとして両足を匠くんの腰に絡めた。
あたしの下腹部にぶつけられるような激しさで匠くんの腰が突き入れられ、その度に身体の奥深くにズシン!と重く強烈な快感が生じて身体を突き抜けていく。
身体の奥深くまで硬くそそり立ったペニスを突き立てられ、焼けるような熱さを帯びた強張りで敏感な粘膜を抉られて、頭の中で白い閃光が立て続けに爆ぜるの が見えた。もう何も考えられず、絶え間なく押し寄せる強い快感に突き上げられて頭が真っ白になっていくのを、微かに残る意識で感じ取っていた。
身体の中に溢れていく快感に押し出されるみたいに、意識しないままにひたすら絡みつくような喘ぎ声を上げ続けていた。
「あーっ!あっ!くう、んっ!あっ!いいっ!いいのっ!すごくっ、やあっ!すごいっ、いいっ!あーっ!あああっ!」
匠くんも限界が近いのか、匠くんの腰の動きが一段と激しく速くなった。小刻みに腰を引き、素早く強い動きで腰を突き入れる。
全身をがくがくと震わせながら絶頂に飲み込まれていった。
「あっ、やあっ!だめえっ!イっ、イクっ!匠くんっ、もう、イクのっ!あたしっ、やあっ、イッちゃう!あっ、ああ!あああーっ!ああああああああああ!!」
一際眩い閃光が硬く瞑った瞼の内側で弾けた。
仰け反った体を戦慄かせながら、絶頂に達していた。
それでも匠くんはまだ腰を激しく振りたて続けた。絶頂に達した直後、また絶頂に達しかけていた。
切羽詰ったようにきつい顔で匠くんは、一心不乱にあたしの中にいきり立ったペニスを突き立て続けた。
荒々しく打ち寄せる波のように繰り返す絶頂の中であたしは、身体を小刻みにひくつかせ続けた。何度も何度も眩い閃光がフラッシュみたいに頭の中で瞬いた。
遠退きかける意識の中で匠くんの呻くような声が耳に届いた。
「・・・萌奈美っ!」
あたしの中の一番深いところで匠くんの強張りが激しく脈打つのを感じた。薄い膜に覆われた匠くんの強張りがびくびくと跳ね、その度に先端があたしの突き当たった部分をノックした。
多分この瞬間、匠くんは最高の快感の証であるドロドロとした白濁の粘液を、ものすごい勢いで薄い膜の中に吐き出し続けているに違いなかった。
ああっ・・・匠くん、今、出てるんだ・・・まだ消え残っている灯火(ともしび)のような絶頂の余韻にうっとりとしながら、あたしの中で匠くんが激しい射精に達してくれているのを歓んだ。
やがて匠くんの強張りのひくつく動きは次第に弱まっていった。そして欲望のありったけを放ち終えた匠くんのものは、時折思い出したようにびくっ、と小さく震えるだけになった。
あたしに圧し掛かっている匠くんの身体が急に重さを増すのを感じた。全てを出し尽くしたかのように匠くんは、射精の間硬直し続けていた身体を弛緩させ、あたしに預けてきた。それでも下になったあたしを気遣って力を全て抜ききらないで、肘と膝で身体を支え続けていた。
あたしは匠くんの身体の重みをいとおしく思いながら、もっとあたしの上に乗っても大丈夫だよって伝えるように、背中に回した手に力を込めて匠くんの身体を引き寄せた。
目を閉じたままでいるあたしの耳に、匠くんの深い息継ぎが聞こえた。ぱちりと瞼を開いた。
あたしの首筋に顔を埋めていた匠くんが、息を整えながら顔を上げてあたしのことを見下ろした。あたし達の視線がぶつかる。
快楽に酔いしれた後の、上気して火照っている顔を見られてしまうのが少し恥ずかしかった。でも匠くんの顔も激しい律動の後で上気しているのが分かって、何だか二人で一緒に成し遂げた感じがして、嬉しくなって笑顔を浮かべた。匠くんもあたしが笑うのを見て笑顔になった。
二人でひとつになれて、最高に気持ちよくて身も心も満ち足りている、終わった後の部屋に漂うこの幸せな空気が、たまらなく嬉しくて大好きだった。
微かな昂ぶりの残る火照ったままの肌を触れ合わせていると、それだけで胸が苦しくなるほど幸せだった。
あたし達は何一つ言葉を交わさなくても通じ合えて、引き寄せられるように唇を重ね合わせた。互いに唇を押し付け合って激しく求め合った。
まだ今もあたしの中でその強張りを失わないでいる匠くんのペニスがびくんと跳ねた。硬い感触があたしの粘膜を擦り上げ、思わずあたしは小さい喘ぎを上げて身体を波打たせた。
あたし達は自分の中の快感を求める欲望が再び急速に膨らんでいくのを感じた。
あたしは匠くんの舌を舐りながら自分から腰を打ちつけ、あたしの中に収まったままの匠くんの硬直した幹をしごき立てた。積極的に動くあたしに匠くんは嬉しそうに為すがままに任せていた。
「萌奈美が上になって」
匠くんはそう言ってあたしから身体を離した。逸る気持ちで素早く身体を起こし、入れ替わるように横になった匠くんに少しも躊躇せず跨った。
天を突くようにそそり立った匠くんの屹立に位置を合わせ、一息に腰を沈めた。熱くぬめった膣は太いペニスを容易く飲み込んでいった。硬直した匠くんの強張りにぬるぬると膣襞を擦り上げられて、あたしは天井を仰いで歓喜の声を漏らした。
「はああ!あふっ」
膣の奥深くまで匠くんのペニスを飲み込みながら、ぞくぞくとした快感が背筋を突き抜けていった。
匠くんの上に完全に腰を落として、匠くんのそそり立ったペニスを根元まで咥え込んだ。
匠くんの先端があたしの一番奥まで届いているのが分かった。
もっともっと激しい快感に貫かれたかった。一刻の猶予もなくあたしは沈めた腰を一端引いて、再び強い勢いで沈めた。身体の奥深くを押し上げられながら、自分の一番深いところで、ずしん!って重苦しい快感が爆ぜるのを感じた。
「ああっ!」
忽ち夢中になって激しく腰を振り立てていった。腰を引いては強く突き出すっていう動きを憑かれたように繰り返した。もっと早く!もっと強く!心の中で繰り 返し念じながら。匠くんに跨ってそそり立ったペニスを根元まで咥え込みながら、一心不乱に腰を振り立て続ける、自分の淫ら過ぎる行為に少しも恥ずかしさを 感じたりしなかった。匠くんのペニスを濡れた器官できつく締め上げながら、入り組んだ襞をずりずりと太い屹立で擦られ、身体の一番奥を強く突き上げられ て、自分も言葉にならないほどの快楽に酔いしれた。
二人の繋がり合った部分からものすごく淫らな湿った音が部屋に響き渡っていることさえ気にならなかった。それどころか、そのいやらしい音が耳朶を打つたび更に激しく欲情していった。
「ああっ、いいっ!あんっ、すごくっ、奥まで、届いてるのっ!やあっ、すごいっ!あふっ!すごくっ、いいのっ!」
止めることができなくて、淫らな言葉を放ち続けた。匠くんの上に跨ったまま、すぐに達してしまいそうになるのが惜しくて、もっとずっとこの身体を戦慄かせ るほどの快感を長引かせていたくて、もっともっと匠くんの焼けるような強張りで敏感な粘膜を擦り立てられ、膣の奥深くを抉られる気持ちよさを感じ続けてい たくて、激しく頭を振って気を紛らわせようとした。
匠くんもあたしをもっと快楽の虜にしようとするかのように、下から腰を突き上げて来る。
あたしが腰を沈めるタイミングに合わせて匠くんが腰を突き上げる。ずん、ずん、と激しくあたしと匠くんの下腹部はぶつかり合い、あたしの奥深くを匠くんの先端が抉った。
「あっ、ひっ!」
怖れを感じてしまうほどの強烈な快感に悲鳴を漏らした。それでも行為を止められなくなっていた。
根元まで匠くんのペニスを収めながら、もっと奥まで硬く勃起したペニスを迎え入れようとした。繰り返し身体の奥を激しく突き上げられて、あたしの中でマグマのような熱い塊がせり上がってくるのを感じた。ずんずんと突き上げられる度に頭の中で火花が散ってスパークが起こる。
もうすぐそこまで火山の噴火のような爆発が間近に迫っているのが分かった。
「あーっ、ああっ、あふっ、く、はっ、あっ、イキそうっ!もうっ、すぐっ!ダメえっ!もおっ、あっ、やあっ、イッ、クうっ!」
無数の眩いフラッシュが炊かれて、あたしの頭の中は真っ白になった。眩くて何も見えなかった。あたしは目も眩む閃光の中に溶けていった。
「ああ!ああーっ!あーっ!あああ!あああああああああああっ!!」
がくがくと身体を震わせながらあたしは絶頂に達した。身体を弓なりに仰け反らせたまま、全身で最高の快感を受け止めていた。
「うくっ!」
一瞬遅く匠くんが鋭く喘ぎ、一際強く腰を突き上げた。
「あっ、くっ!イクっ!」
そう言い放って、あたしを乗せたまま匠くんの身体がぐうっと仰け反る。
あたしの一番奥に突き立ったペニスはびくびくと激しく脈打った。
匠くんの屹立の脈打ちを感じていた。射精している。匠くんとほとんど同時に達することができて満足だった。
あたしと匠くんを隔てている、1ミリにも満たない薄い膜の中で射ち出されている匠くんの精液が、あたしの身体の一番奥で直接突き刺さるような激しさで射精されるのをイメージした。匠くんの熱い迸りを身体の奥で直に受け止めたいって強く思った。
絶頂が去って身体から力が抜けていった。のろのろと匠くんの身体の上に自分の身体を投げ出して横たわった。
匠くんの胸に頭を預けると激しく胸が上下に動いていた。あたしもその息遣いに合わせるように荒い呼吸を繰り返した。
匠くんに身体を預けたままぴったりと肌を合わせていたら、匠くんの腕が気だるげにゆるゆると上がってあたしの身体をそっと抱き締めた。
「萌奈美の中、すごく気持ちよかった」
匠くんが呟いた。あたしも匠くんの胸に頬を擦りつけながら頷いた。
「あたしも。匠くんの、とっても気持ちよかったよ」
答えてから、自分の言葉がすごく大胆なのに気付いて恥ずかしくなった。匠くんはどう思っただろう?そうっと顔を上げて上目遣いで匠くんの顔を伺ったら、目を丸くしてぽかんとあたしのことを見つめていた。目が合って思わず、ひえっ、って慌てた。
あたしが焦った表情を浮かべた途端、匠くんはくっ、と押し殺した笑いを漏らした。二度、三度、くっくっと匠くんは抑え切れない様子で忍び笑いを続けた。顔が真っ赤になるのが自分でも分かった。
「あははは!」
とうとう匠くんは声を上げて笑い出した。羞恥に固まっているあたしのことを抱き締めている腕にぎゅうって力が込められる。
どうしたらいいか分からなくて困った顔で匠くんを見返すあたしの唇に、匠くんは素早くキスをした。唇を離した匠くんはさも面白そうにあたしのことを見た。
「萌奈美は最高の恋人だよ」
え!?
そんなことを言う匠くんの言葉が信じられなくて耳を疑った。
「とっても優しくて、料理上手で、可愛くて」
そこで匠くんは一度言葉を切った。あたしの反応を確認するように。
「それから、とってもエッチで」
悪戯っぽい口調で匠くんは付け加えた。匠くんの視線を受けながら、あたしは赤い顔を更に赤くした。顔から火が出るんじゃないかって思えるくらいに熱かった。きっと耳まで真っ赤になっているに違いなかった。
「もおっ、意地悪っ」
拗ねるみたいに言って、顔を隠すように匠くんの裸の胸に顔を押し付けた。
「でもホントのことでしょ?まだ僕のを締め付けたままだよ」
「もう知らないっ!」
あたしをからかう匠くんの言葉に、怒ったような声で答えながら、下半身に意識を集中してしまった。匠くんのペニスはまだ硬さを保ったまま、あたしの中に収まり続けている。意識した途端、匠くんの強張りはびくっと跳ねた。
敏感な粘膜を擦られて、あたしは身体を震わせた。んっ。思わず溜息のような喘ぎが口から漏れた。
「萌奈美っ、そんなにぎゅうぎゅう締め付けないで」
降参するような匠くんの言葉にあたしは、「そんなことしてないもん!」って抗議した。
匠くんのペニスがあたしの中でびくびくって暴れるたび、きゅん、って切なくなった。
「やあっ、匠くんそんなに動かさないで」
耐え切れなくなって言うと、匠くんも困った顔をしながら言い返した。
「だって萌奈美の中がうねって締め付けるから・・・」
次第に二人で熱い息を漏らし始めていた。匠くんを見ると熱い眼差しであたしを見ていた。多分あたしも同じように潤んで濡れた目をしているんだって思った。
あたし達は今日目覚めてから早くも三回目になるセックスを開始した。匠くんを快楽に溺れさせたくて、あたしは匠くんの感じる部分を夢中で刺激し続け、匠く んはあたしを愛欲の虜にしようとして、あたしの敏感な場所を執拗に責め立てた。そうして二人で最高の快感を味わうことだけしか頭になくなって、あたし達は 深く繋がったまま狂ったみたいに腰をぶつけ合った。部屋には熱い息遣いと淫靡な喘ぎが響いて、淫猥で濃密な空気が充満していた。
 


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