【 FR(L)AG-ILE-MENT 】 ≪ Suger Love 第1話 ≫


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翌朝、夕飯を食べ損ねてお腹が空き切っていたあたし は、みんなより早く起き出して一人でトーストと目玉焼きとベーコンを焼いて、コーヒーを沸かし、さっさと朝ごはんを食べた。最後にヨーグルトで締めくくっ て満足した。みんなが起きてきた時にはもうあたしは食べ終わっていたので呆れた目で見られてしまった。
さて、せっかく早起きしたので朝のまだ涼しいうちに夏休みの宿題を進めておくことにして、それから文化祭に発行する部誌に載せる作品の執筆をした。まだ下 書きの段階だけど、全体的な構成や世界観、一部の場面の詳細な描写は明確にイメージできているのでそれを形にしていく作業に没頭した。午前11時を過ぎる 頃、待ちかねた気持ちで匠くんに電話をかけた。
コール音がいつもより多かった。ひょっとしてまだ寝てるのかな?心配になってきた時、丁度声が聞こえた。
「もしもし。萌奈美?」
「うん。おはよう。もしかして、まだ寝てた?」
もしまだ寝てたんだったら無理やり起こしちゃったかな?申し訳ない気持ちになりながら聞いてみた。
「うん、いや、うとうとしてた。目は覚めてたんだけど、何か起きるのが面倒くさくてさ、ベッドでうだうだしてて、丁度今うとうとしてた」
「疲れてる?」そう聞くあたしに、努めてはきはきした匠くんの声が答えた。
「いや、全然。もう起きるし」
「あの、行ってもいい?」
「もちろん。おいで」
間髪入れずに匠くんは即答してくれて、あたしはほっとした。
「これから行ってもいい?」って聞いたら、匠くんは「まだ朝食も食べてないし・・・」って言うので、勢い込んで言った。
「あたし、朝ごはん用意してあげる」
「そう?じゃあ、折角だからお願いしようかな」
「うん」
匠くんの声が嬉しそうだったので、はりきって頷いた。
「これからすぐ行くから」
「え、あんまり急いで来なくてもいいよ。まだ顔洗ったり、髭剃ったりしなきゃいけないし」
匠くんは慌てていた。
電話を切って、匠くんもやっぱり髭剃ったりするんだなあって意外に思った。そりゃあ男の人なんだから髭くらい生えるよね。パパが洗面所でいつも髭を剃って る光景は見慣れているのに、その光景が匠くんにはうまく当てはまらなかった。そして匠くんの不精髭が生えたところも見てみたいなってちょっと思ったりし た。多分、朝を一緒に迎えるような関係になれば不精髭を伸ばした匠くんの顔を見られるんだろうなって思い、それが近いうちに訪れるつもりでいたあたしは思 わず顔が赤くなってしまった。
手早く髪をセットすると、何を着ていこうかちょっと思案して、ノースリーブの白のブラウスに七部丈のモスグリーンのサマーカーディガンを羽織り、膝上丈のデニムのミニスカートを履いた。履物は素足にベージュのサンダルにした。
あたしは密かにある計画を立てていた。

キッチンにいたママに、「ママ、あたし出掛けてくるね」って一方的に告げて玄関へと向かった。
「え?萌奈美、お昼は?」
慌てた感じのママの声が呼び止めたけど、「いい、いらなーい。行ってきまーす」って言い残して玄関を飛び出した。
一晩ぐっすり寝たお陰ですっかり疲れは吹き飛んでいて、弾む気持ちで匠くんの部屋に向かった。
武蔵浦和駅に隣接するスーパーで食材を買い、パン屋さんで半分に切ったフランスパンを買ってから匠くんの部屋を訪れた。
「おはよう」
会って真っ先に元気たっぷりの笑顔で匠くんに微笑みかけた。
「おはよう。元気だね」
匠くんは言いながら生あくびをした。
「だって若いもん」
「はいはい。どうせもう四捨五入すればおじさんの仲間入りですよ」
そんな冗談交じりの愚痴を零す。匠くん、やっぱり歳の差を気にしてるのかなあ?
はりきって買ってきた食材をレジ袋から出してキッチンのアイランド型カウンターに並べた。匠くんが一体何ができるのかって興味津々で覗き込む。
パスタ、ブロッコリ、ベーコン、トマト、セロリ、レタス、玉葱、大蒜、鷹の爪、バジル、生のブルーベリーとフランボワーズ、ヨーグルト。
「パスタ?」
匠くんの問いに頷く。
「ブロッコリのパスタとブルスケッタを作るの」
「ふーん」後ろから覗き込む匠くんが気になったので、「出来上がるまで待ってて」って追い払うことにした。
匠くんは「じゃあコーヒー淹れるよ」ってコーヒーメーカーを出してセットし始めた。
まずブロッコリを適当な大きさに切り分け、塩を入れたお湯が入ったお鍋でさっと茹でておいた。ブロッコリは後でパスタと和えて炒めるし、この時は硬めに茹でておくのだ。やわらかくし過ぎるとブロッコリの食感がイマイチになってしまうので注意する。
平行してブルスケッタも作り始める。フランスパンを適当な厚さに切って、オーブンでこんがりと焼き目が付くまで焼く。トーストしたフランスパンの表面にバ ターを塗り、大蒜をこすりつけて香りをつける。ボールの内側にも大蒜をこすりつけて香りをつけておく。そこへ粗みじんにカットしたトマト、エクストラバー ジンオリーブオイル、塩、ちぎったバジルを入れて和え、味を馴染ませる。トーストしたフランスパンの上にボールの中身を適量乗せれば、これで一品完成だっ た。
続いてフライパンでベーコンを炒め、潰した大蒜、オリーブオイル、鷹の爪を入れる。大蒜の香りが出たら下茹でしておいたブロッコリを加え、白ワインを注い でアルコールを飛ばす。別のコンロで同時進行で茹でておいた(こういう時三つ口コンロは便利だってつくづく思う)パスタをフライパンに加え、手早く絡め る。塩を少量加えて味を整えたら、最後にエクストラバージンオイルを小さじ一杯ほど回しかけて完成。
匠くんがセットしてくれたコーヒーメーカーからもいい香りが立っていた。
お皿を二枚出してパスタを取り分け、ブルスケッタは大きめのお皿に盛り付けた。
それから手早くブルーベリーとフランボワーズを水洗いし、カップのヨーグルトに多めに落としてデザートにフルーツヨーグルトを用意した。
ダイニングテーブルに出来上がった料理を並べたら、匠くんがタイミングよくコーヒーカップを置いた。あたしの方にはミルクがたっぷり入っている。
「どうぞ召し上がれ」向かい合わせに座った匠くんにあたしは言った。
「いただきます」
匠くんはまずブルスケッタに手を伸ばした。そのまま齧(かじ)り付く。息を潜めて匠くんの反応を伺った。
「うん。美味しい」
顔を綻ばせて匠くんが嬉しそうな声で言った。内心どきどきしていたあたしは、その一言を聞いてほっとした。
「ほんと?」
一応念のため聞き返してみる。
「うん。ホント、美味しい」
あっという間にブルスケッタを二個口に頬張り飲み込んでから、パスタに手を伸ばした。また緊張の一瞬だった。
フォークで器用に絡め取ったパスタを匠くんは口に運んだ。パスタが消えた口元をじっと凝視していた。
その口が綻(ほころ)んだ。
「うん。パスタもすごく美味しい」
その言葉を聞いて、大きく息を吐いて椅子にもたれかかった。
「あー良かった」
「ほんと、すごく美味しいよ。萌奈美、料理上手だね」
匠くんは本当に美味しそうにパスタを口に運びながら褒めてくれた。
「え、でも簡単な料理だけだよ。あんまり手の込んだ料理は作れないから」
一応事実を伝えておく。
「これだけ手早く美味しい料理が作れれば言うことないよ」
そうかな?匠くんの言葉に少し自信が湧いた。
「いいお嫁さんになれるよ」匠くんは何気なく言ったに違いないのに、あたしは過剰に反応してしまった。
「え!?」
思わずあたしが上げた大きな声に匠くんの口の動きも止まった。
すこし沈黙が流れた。
おずおずと「誰のお嫁さん?」って聞いてみた。
あたしの問いかけに、今度は匠くんが慌てて「え!」って驚いた声を上げて固まってしまった。
「えーと・・・」匠くんはそわそわして落ち着かなかった。
そして意を決したように向かい側にいるあたしに視線を据えた。
「こんな美味しい料理、毎日食べさせて欲しいな」顔を赤くしながら匠くんが告げた。
でも、すぐにまた言い直した。
「毎日食べさせてくれるかな?」
何だかプロポーズされたみたいな気分になって感激してしまい、思わず涙がでそうだった。
「うん。いつでも食べさせてあげる。もっと沢山美味しいお料理作れるようになるからね」
「うん、楽しみにしてるよ」って匠くんは言ってくれた。
今思ったことを口にした。
「早く、そうなりたいね」
匠くんに毎日お料理を作ってあげる日が早く訪れればいいなって思った。
少し照れながら匠くんもあたしの言葉に、うん、そうだねって頷いてくれた。
それから匠くんが「せっかく美味しい料理なんだから温かい内に食べよう」って言ったので、話を止めて料理を食べるのに集中した。パスタもブルスケッタも我ながら上出来だった。

食べ進めてから、考え抜いていたことを口に出した。出来るだけさりげなく聞こえるように注意して。
「麻耶さんは今日はいないの?」
「ああ、うん。撮影で軽井沢に行ってるんだ」
匠くんは食べながら答えた。
「じゃあ帰り遅いの?」もう少し探りを入れる。
「いや、泊まりだって」
匠くんはあたしの企みには一向に気付く気配もなく教えてくれた。
よーし!あたしは計画実行のゴーサインを心の中で出していた。
料理を平らげ、コーヒーを飲み干した匠くんは満足そうにひと心地ついて言った。
「ご馳走様。とっても美味しかった」
「よかった」
ほっとしたのと嬉しいのとで満面の笑みを浮かべた。
食器を片付け始めたら、僕がやるよって匠くんが言ったので、あたしは大丈夫だから休んでてって断ったんだけど、料理を作ってくれたんだからせめて片付けは 自分がやるって匠くんは言い張って、結局二人で後片付けをすることにした。あたしが洗って濯(すす)いだ食器を匠くんに渡し、匠くんが拭くっていう分担に なった。二人でキッチンのシンクに並んで立って食器を洗っていると、まるで新婚家庭のような雰囲気がしてなんとなくくすぐったくて甘い感じがして嬉しかっ た。
「ねえ、ちょっと新婚さんみたいだね」
あたしが楽しそうに言うと、
「うん、まあね。確かに」
そう答える匠くんの顔もちょっと照れくさそうではあったけど、満更でもないように見えた。

片付けを終えてから匠くんの部屋で過ごした。匠くんの部屋に入ってからカーディガンを脱いで、ベッドにうつ伏せになって手足を伸ばした。もうすっかり匠くんのベッドの上は居心地いい場所になってあたしに馴染んでいた。
匠くんはどうやらあたしの剥き出しの肩や太ももまで見えている足に落ち着かない様子だった。もっともこれはあたしの計算通りなのだ、実のところ。
ごろんと仰向けになって匠くんに「ミスチルのライブDVDが見たいな」ってお願いした。
棚から数枚を引き抜いて匠くんは「どれ?」ってあたしにDVDのジャケットを見せた。「んー」って唸りながら、目の前に並べられたDVDのジャケットの間 で視線を行き来させたあたしは、「これ」って言って『Mr.children Tour 2004 シフクノオト』ってタイトルのついたDVDを指差した。
あたしと匠くんはベッドに並んでうつ伏せになり、抱えた枕の上に顎を乗せた姿勢でミスチルのライブDVDを観た。ぴったり寄り添うように並んで手を繋ぎ あった。あたしは匠くんの繋いだ手を抱え込むようにした。あたしの胸に匠くんの手が当たっていた。匠くんは気にはなっているみたいだったけど、特に何も言 わずDVDを観ている。
「名もなき詩」「口笛」と、あたしと匠くんの大好きな曲が続けて歌われて胸がじーんとしたし、「掌」のイントロの部分はうわあって感じでDVDなのに鳥肌が立ちそうになった。
それからこれも大好きな「Image」が歌われてたし、その前の「ニシヘヒガシヘ」が終わって、暗くなった会場の中で大きなスクリーンに「Close  Your Eyes」っていうメッセージが映って、みんなが目を閉じて静寂に包まれた会場に「どれくらい目をつぶっていたろう? 君を思い浮かべなが ら」って桜井さんの声が響いて、ここでもすごく感動してしまった。
それと「大切なものは いつだって 目の前に転がってる ふんずけないように 蹴飛ばさないように 歩いて行けるなら」って歌詞を「歩いていかなく ちゃ」って歌っていて、これは歌い間違いとかじゃなくて、「Image」を作った時には「歩いて行けるなら」っていう言葉に、未来への自信も何もない自分 にとっての希望や願いを込めていたんだけど、現在だって決して未来への自信とか確信とか手に入れられた訳じゃないけど、だけどそれでも「歩いていかなく ちゃ」っていう決意、或いは意志がそこには生まれてて、その変化が歌詞に表れたんじゃないのかなって、あたしにはそんな風に感じられた。
ライブDVDでこれだけ感動してしまうんだから実際のライブではどれだけすごいんだろう。是非ライブを観てみたいって思っているんだけれども、ミスチルの ライブチケットを入手するのはかなり困難だった。匠くんと二人で行きたいねって言っているけれど、当分まだ実現しそうもなかった。
ライブDVDを観終わり、しばらく匠くんの手を握ったまま目を閉じてじっとしていた。匠くんも寄り添っていてくれた。

「匠くん」
目を閉じたままベッドに顔を埋めた姿勢で名前を呼んだ。ある決意を込めて。
「ん?」
匠くんが短く聞き返す。
あたしは仰向けになった。目を開ける。照明が眩しくて少し目を細める。
「好き」
匠くんからの返事を待たず、もう一度、はっきりした声で繰り返した。
「あたし、匠くんが好き」
真っ直ぐに匠くんを見つめた。
匠くんはなんて言えばいいのかちょっと考えている風だった。
「あたし、匠くんが好き。どんどん好きになる。前よりずっと。昨日より今日の方がずっと」
熱に浮かされたように続けた。
「だから、もっと匠くんと先に進みたい。匠くんと次のステップに登りたい」
溢れ出ようとするものが抑えられずに堰を切ってほとばしり出ていた。匠くんを見つめる自分の眼差しが熱を帯びて潤んでいるのが分かった。
「想いが抑えられないよ」
握っていた匠くんの手を引く。あたしの告白に息を呑んでいた匠くんは、手を引かれてあたしに覆いかぶさった。真上からあたしを見下ろす匠くんの顔を瞬きもせずに見上げて訊ねる。
「匠くんは?」
匠くんの想いが自分と同じだって確信を持っていたけれど、そう問いかけた。
匠くんはほんの一瞬躊躇したみたいで、だけどすぐ強い眼差しであたしを見つめ返した。
「僕も同じだ。僕も萌奈美への気持ちが抑えられないでいる。もうずっと前から、萌奈美が欲しくてたまらなかった。萌奈美の全てが欲しい」
匠くんの言葉に胸が震えた。我慢しようとしたけど、涙が頬を伝って流れ落ちた。
「萌奈美」
小さく頭を振った。
「・・・嬉しいの」
匠くんはあたしに顔を寄せ、伝い落ちた涙の後に口づけをした。
涙の後にキスをした匠くんの唇があたしの唇に重ねられる。あたしは受け入れる。
匠くんの口づけは言葉を裏付けるかのように激しかった。あたしもそれに応えた。むさぼるような激しい口づけを交わした。絡ませ合った舌を強く吸い唾液を啜り、お互いの口蓋の隅々まで嘗め回した。長い時間ずっと二人とも口づけに没頭し合った。
その激しく官能的な口づけに気持ちが揺さぶられた。想いが昂ぶっていた。お互いを強く求め合っていた。
激しく抱き締め合った。匠くんはあたしの耳元や首すじに口づけし舌を這わせた。気持ちが昂ぶって思わず漏らした喘ぎ声は、自分のものじゃないように響いた。
匠くんはブラウスの上から胸を触り、円を描くように撫でてその存在を確かめ優しく揉んだ。しばらくブラウスの上からそうしていた匠くんは、右手でブラウスのボタンをはずしていった。ボタンをはずしながら匠くんはあたしの首すじや剥き出しの肩に唇を這わせ舌で舐めた。
ボタンがはずされ前が開かれる。匠くんはちょっと頭を起こしてあたしの胸を見る。ブラがまだ胸を隠している。匠くんの手が迷うことなくフロントホックに伸 びた。胸を隠していたものが取り払われる。匠くんの目に裸の胸を晒すことに激しい羞恥を感じて、思わず手で隠そうとしてしまう。
匠くんが優しくその手を抑える。
「萌奈美、僕に全部見せて」
優しい声で匠くんが囁く。
「でも、恥ずかしい」
今頃になって臆病な気持ちになった。
匠くんは優しく微笑んで頷く。
「大丈夫。心配しないで」
そして優しくしながらも少し力を込めてあたしの手をどかせた。匠くんの目に胸が晒されて、その瞬間ぎゅっと目を瞑(つぶ)った。匠くんの優しい声だけが届く。
「綺麗だよ」
緊張しているからなのか匠くんの声は擦れていた。
匠くんの言葉を聞いて、視界が暗闇に包まれたまま、ほっと安堵した。
次の瞬間、胸に匠くんの手が触れた。初めて自分以外の誰かに、しかも異性に触れられる恥ずかしさと、そして大好きな人に触れられているっていう事実にびく りと身体が震えた。しばらくは胸の膨らみを覆うように触れていただけの匠くんの掌が、少ししてゆっくりと優しく動き始めた。胸の形を確かめるようになぞる ように、本当にそうっと優しく。自分でもあんまり胸が大きくないって感じてて、(まだ高校生なんだし、って思いもするけど、でも結香とかに較べたら何か全 然発育不全って感じがして、以前だったら気にもしていなかったんだけど、匠くんを好きになって、やっぱり男の人って胸が大きい女の子の方が好きだったりす るのかなあ、なんて気になっちゃう・・・。)匠くんに今つるぺたとか思われてないかな、とか考えたりして、最初は恥ずかしさで胸が一杯だったんだけど、匠 くんの手がゆっくりと動く度、痺れるような快感が生まれて身体が熱くなっていくのを感じた。直接伝えられる匠くんの掌の感触にじんじんとした感覚が神経を 伝う。思わず熱い吐息が漏れそうになって唇を結んだ。波打つような快感に胸の先端が硬く尖っていくのが分かった。
もどかしいくらいそっとした動きで胸を揉まれ、じんわりとした快感に浸っていたあたしの身体は、匠くんの指が胸の頂の蕾を摘み上げた刺激にびくんと大きく波打った。
摘んだ乳首を挟んだ指の腹で転がすみたいに揉まれた。強い快感がびりびりと尖った乳首から快感の中枢へと流れ込む。
「んっ、ふっ」敏感になった部分を責められ、我慢しようとしても快楽の声が口を突いて出そうになる。
匠くんは両手で両の膨らみを同じように揉み、つんと尖った蕾を摘み上げた。
ふっと右の乳首の刺激が遠ざかったと思った次の瞬間、暖かく濡れた感触に乳首が包まれた。そして湿った音が響き、強く吸われた。ひっ!新たな快感に喉の奥で悲鳴を漏らす。
乳首が濡れた弾力のある感触に転がされる。それが舌だって気付く。
匠くんは右の乳房に吸い付き、乳首を舌で転がし、強く吸引した。今までとは違う快感に抑えようも無く喘ぎを漏らし続けた。
「あっ、ふっ、駄目っ、たく、み、くんっ、吸っちゃ、やはっ」
連続して送り込まれる快感に、言葉は途切れ途切れになり正しく伝えられなかった。
匠くんは濡れた音を部屋に響かせて乳房を吸い続けた。右、左と代わる代わるに両の乳房を吸い、乳首を舐めた。濡れた音があたしの耳を襲い、激しく情感を煽りたてる。
自分の声ではないような喘ぎ声が途切れることなく口から流れ出ていく。
匠くんの手が身悶えしている間に捲(めく)れ上がったあたしのスカートの中へと差し入れられた。匠くんの指は忍びやかに下着を撫ぜてあたしの秘部へと迫っていった。
快楽に染まっていたあたしは突然我に返った。もう胸への刺激だけで下着はびしょびしょになっていた。それを匠くんに知られることに激しい羞恥心が湧いた。こんなに濡らして匠くんにいやらしいコって思われやしないか不安になった。
「・・・匠くんっ、やっ、待って!」
声に出して制止した。
だけど匠くんは手の動きを止めることなく、乳房から顔を離して言った。
「僕に全部任せて」
でも・・・尚も言いかけようとして、ぬるりと下着の上から股間がこすられた。
いままでとは比べ物にならない快感が股間からぞわりと背筋を伝って脳へと突き抜けていった。
「く、あんっ」
一瞬全身が硬直した。
匠くんの指はぬるぬるに濡れた下着の上から、あたしの秘部を上下に往復した。ぬめった下着と秘部がぬるぬると擦れ、言いようもない快感が打ち寄せた。
息もつけぬまま押し寄せる快感に喘ぎ声を止めることができず、がくがくと身を仰け反らせた。
激しい快感に頭の中は濃密な靄がかかったように混濁し、満足に考えることもできなくなっていた。
匠くんの手が下着から忍び込み、熱くぬかるんだ秘唇を直接こすり上げた。
重い快感が突き抜ける。
「ああっ、んっ」
あたしは一際高く啼いた。
匠くんの指はぬめりをまとわりつかせるように秘唇を何度か撫ぜると、その指の一本がぬるりと侵入した。
「ひっっ」
ベッドの上で身体が大きく弾む。
熱くぬめった中へと差し込まれた匠くんの指は、あたしの膣内の襞を擦りあげるように深く浅く出し入れされた。
「あっ、あっ、ああ、や、んっ、はっ、くうっ・・・」
膣襞を擦り上げられて激しい喘ぎが甲高い叫びとなって漏れ続けるのを抑えることができなかった。
股間からいやらしい粘った音が響いていた。その淫靡なぬめった音はあたしが発しているんだった。その激しい羞恥が白濁した意識を更に煽り立てた。
快楽に染まったあたしは、匠くんの唇が乳房から離れていたことにも気付かなかった。
不意に秘唇のすぐ上にある、激しい快感にぷっくりと膨らんだ蕾がちゅうって吸われた。
「ひああ!」
混濁した意識では一瞬何が起こったのか理解できなかった。突然更に強い快楽がとてつもない速さで身体を貫いた。
何が起きたかを理解し、必死に頭を起こして懇願した。
「匠くんっ、やっ、そんな、のっ、駄目っ!!」
匠くんの耳にあたしの声は届いていないのか、激しい快感にぼやけそうになるあたしの視線の先、あたしの股間に顔を埋めた匠くんは一向に離れようとはしな かった。それどころか舌で尖った肉芽を激しく転がし、あたしの最も敏感な部分を容赦なく攻め立て続けた。膣壁を擦り立てる指もその動きに連動するかのよう に激しさを増した。
今まで経験したことのない強烈な快感に、あたしの意識のヒューズは弾け飛んでいた。ただ絶え間なく連続して送り込まれる強い快楽に、頭の中はフラッシュを 炊いたかのように激しく快感が爆発し、喉の奥からは自分ではどうすることもできない快楽に染まった喘ぎ声が漏れ続けていた。
突然、マグマのような熱い快感の塊が沸き起こった。どろどろとした快楽のマグマは身体の深奥から猛スピードで出口を求めて膨れ上がっていった。
「あっ、ひっ、あっ、あっ、もっ、うくっ、だ、めぇ、いひっ、くっ」
切羽詰まった声が途切れ途切れにあたしの口から発せられる。
匠くんはあたしの絶頂を感じ取り、一層その舌と指の動きを激しくした。
更に快楽が加速され、あたしは激しい快楽の渦へ飲み込まれ、揉みくちゃにされ、ばらばらになった。
「ひいっ、ああっ、ああっ、ああーーっ!!」
自分のものとは思えない一際高いよがり声を発して、激しい絶頂へと押し上げられた。全身ががくがくと痙攣し、やがて仰け反ったまま硬直した。
硬直したままであたしの身体はわなわなと小刻みに震えた。
匠くんの唇と指はあたしが絶頂を迎えても、なおその動きはすぐには止まらなかった。絶頂のまま送り込まれる更なる快感に、しばらくあたしの身体は硬直し仰け反ったたままひくひくと震えていた。
やがてあたしの敏感な部分を攻め立てていた匠くんの舌と指の動きが弱まり、あたしは硬直から解き放たれ、仰け反っていた身体はどさっと重くベッドに沈んだ。
しばらく身動きひとつ出来なかった。だらしなく両足を広げたままぬらぬらと光る股間を曝け出していた。見開かれた眼から頬へと一筋涙の跡が残っていた。呆 けたように焦点が合わない視線が天井を漂い、ぽかんと開けた口から涎が一筋伝い落ちていた。ひゅうひゅうと空気を吸う乾いた音が喉の奥で鳴り、胸が激しく 上下していた。

身動きしないあたしに匠くんは覆いかぶさるように寄り添い、指で口元の涎を拭(ぬぐ)った。頭の片隅で恥ずかしいっていう気持ちが湧いたけど、全身が気だるくて手足を動かす気になれずにいた。
それから匠くんは涙で濡れた目元にキスをして、優しく抱き締めてくれた。
互いの身体をすり寄せてみて触れ合う肌の感触で、匠くんが着ていたものを脱ぎ去っているのに気が付いた。
「萌奈美」
あたしの瞳を見つめて匠くんは囁いた。
「愛してる」
その言葉はあたしの全身を熱く包んだ。落ち着きつつあった心臓が再び、どくんって大きく跳ねた。
途端に匠くんの顔が滲(にじ)んだ。
自分でも意識しないまま匠くんの一言に涙が溢れ、とめどもなく頬を伝い落ちた。
「あたしも、愛してる」
匠くんへの最も大切な想いを可愛く伝えたかったのに、ずっと喘ぎ続けていてその声はひどく擦れてしまっていて、こんな告白には全然相応しくなかった。
きちんと匠くんに聞こえたかどうかさえ心配だった。
そんなあたしの不安を打ち消すかのように匠くんは優しく口づけをした。喘いでいたせいで冷たく乾いたあたしの唇に、匠くんの温かくしっとりした唇が心地よ く重なった。匠くんの舌が口内に差し込まれる。自分の舌を絡め、あたしは喉の渇きを癒すように激しく匠くんの舌を吸った。
激しく絶頂に達したばかりなのに、匠くんとこうしているだけで、あたしの中ではまたどろりとした欲望が膨れ上がる。
下から匠くんの頭を掻き抱き、烈しく唇を押し付けた。
しばらく身体を絡め合い、濃密なキスを交わした。
匠くんが身体を起こし唇が離れる。激しさを物語るように離れていく匠くんとあたしの唇の間に一筋糸が引いてそして途切れた。その光景はなんだかとても卑猥に思えた。

「萌奈美、いい?」
匠くんの問いかけにこくりと頷く。強い意志の籠もった眼差しで匠くんを見上げる。あたしの中に躊躇いはなかった。
匠くんも無言のまま頷き返し、緊張した面持ちで身体を重ねて来る。あたしに覆い被さり、あたしの両足を大きく開いた。激しい羞恥を感じたけれど我慢して匠くんに従った。
匠くんが視線を落としてその位置を確認しながら腰を進め、あたしのその部分に硬いものが押し付けられた。ぐっと押し付ける力が強まった。緊張して思わず身を竦(すく)めた。
あたしの身体の強張りを感じて匠くんは優しい声で言う。
「萌奈美、緊張しないで」
躊躇ってはいないのに、多分不安な顔をしていたんだと思う。匠くんの眼を見上げると優しい眼差しであたしを見つめていてくれる。
ぎこちなくはあったけどあたしは笑顔を見せた。そしてはあっと大きく息を吐き身体を弛緩させた。
匠くんは笑顔のまま頷き再び腰を進めた。あたしの秘所は先ほどまでの激しい愛撫と濃厚なキスで溢れるほどに濡れそぼっていて、そのぬめりで強く押し付けられていた匠くんの硬くなっているそれは、容易にぬるっと先端が潜り込んだ。
まだ差し込まれたことのない大きさの異物が入り込んで来る違和感に、あたしは「ひっ」と小さく悲鳴を上げた。
「痛い?」
思わず閉じた眼を開けて見上げると、匠くんが心配気な顔で見つめていた。
「大丈夫」
小さく頭を振り、心配ないよ、って伝えるために笑顔を作った。
匠くんは気遣う表情ではあったけれど、このまま中断したままでいることもできなくて、口元を引き締め、更に腰に力を込めてその昂ぶったものをあたしの中へと深く突き入れた。
ぐぐっとあたしの中を押し広げ、硬い異物がゆっくりとあたしの奥深くに突き込まれる感覚に、結んだ口の中で悲鳴を上げた。
匠くんに心配をかけないようにしようと思いながら、異物感と鈍い痛みにどうしても顔が歪み、くぐもった悲鳴が漏れるのを抑えられなかった。
じりじりと進入を続けていた匠くんはぴたりと動きを止めた。あたしにもその理由が分かった。あたしの膣の半ばで往く手を堅く阻むように立ち塞がる壁があっ た。匠くんが更に力を込め腰を推し進めようとしても、その壁は頑としてそれを拒み、それ以上先に進めさせなかった。匠くんが力を込めて挿入しようとすれば するほど、あたしは無理やり貫かれる痛みにくぐもった悲鳴を上げ、思わず身体を上へとずらして逃げてしまっていた。
苦痛で額に油汗を浮かべていた。髪がべったりと張り付くのが気持ち悪かった。匠くんとひとつになりたいのに、心からそれを望んでいるのに、苦痛から逃げてしまう自分の身体を抑えられず、哀しくてあたしは涙を浮かべた。
匠くんも緊張と戸惑いから荒い息を付き汗を浮かべていた。そして匠くんははあっと大きく一回深呼吸をした。
「萌奈美、我慢して」
匠くんの声にはっとして匠くんを見返した。匠くんはあたしを切ない眼差しで見下ろしていた。
身体は拒んでいるけれど、気持ちは匠くんとひとつになることを心から望んでいる。だから匠くんの言葉に強く頷き返した。
匠くんはあたしの肩を押さえ込むと今迄以上の力で腰を推し進めた。肩を押さえ込まれたあたしの身体は上に逃げることができずに、膣の奥深くへの挿入を阻んでいる処女膜は強い力で突かれ、遂にぶつっという感覚と共に突き破られた。
「ひ、ぎいっ」
無理やりに肉の膜を突き破られた激痛に我慢できず大きく悲鳴を上げた。
強固に侵入を拒んでいた壁が破られると、その先へはいとも易々と突き進み、異物はあたしの最深部へと達した。硬い匠くんのものがあたしの一番奥深くに突き当たっているのが感じられた。
「萌奈美、全部入ったよ」
ほっとしたような匠くんの声で、あたしは強張らせていた身体の力を抜いた。
匠くんを見るとちょっと疲れてはいるけれど安堵した匠くんの優しい笑顔があった。
「ほんと?」
呆然としたまま聞き返した。
「うん」
そう言って匠くんはあたしの手を取り、あたし達の繋がった部分へと導いた。匠くんに促されて繋がった部分に触れてみたら、匠くんの股間で屹立したものは根元まであたしの中に没しているのが分かった。
「ほんとだ」
何だか信じられなくて、根元まで刺さっている匠くんのそれを遠慮なく執拗に撫で回しながら呟いた。
その様子が可笑しかったみたいで匠くんは歯を見せて笑った。あたしも匠くんの笑顔に釣られて笑顔になった。
「あたし達、いまひとつなんだね」
熱い気持ちで胸が一杯になりながら匠くんに聞いた。
「うん。とても、嬉しいよ。・・・すごく・・・幸せだよ」
匠くんも言葉を詰まらせていた。匠くんを見て、匠くんもあたしと同じ気持ちでいてくれているのが分かった。あたしもすごく幸せだった。
下腹部ではずきずきと鈍い痛みがずっと絶え間なく続いているけれど、胸は幸せで一杯に満たされていて、そんな痛みはちっとも気にならなかった。
ずっと願っていた想いがやっと叶ったんだ。今あたしは匠くんとひとつになってるんだ。万感の思いで胸が苦しかった。
また知らないまま涙が流れ出ていた。でもこれは嬉しくて零れている涙だった。あたしは笑いながら泣いていた。
匠くんはあたしの昂ぶった気持ちを鎮めるように、優しく口づけをした。あたしも目を閉じて匠くんの唇を味わった。
でもずっとこのままでいる訳にもいかないって、はたと気が付いた。匠くんはあたしを気遣って、この状態のままずっとこうしてくれているけれど、男の人にはこの状態は辛いはずだ。
自分に気合を入れて、匠くんに言った。
「匠くん、動いていいよ」
匠くんはあたしの言葉にちょっと戸惑ったようだった。
「でも・・・」
匠くんがあたしの身体を気遣ってくれているのは分かっている。
「平気だから・・・ってあんまり平気じゃないかも知れないけど、あたしが痛がっても匠くん止めないで。あたし我慢するから」
「いや、無理しなくていいよ」
匠くんは頭を振った。
「こうしてひとつになれただけで満足だよ」
そう笑顔で答えた。
でも、あたしはそれじゃ十分じゃなかった。もっと匠くんにあたしの中を感じて欲しかった。あたしの中で気持ち良くなって欲しかった。匠くんにそうあたしの気持ちを告げた。
「匠くんにあたしの中で気持ちよくなって欲しいの」
匠くんはあたしがそう言うと苦しげな顔をした。逡巡しているのが分かる。あたしに苦痛を与えなくないっていう気遣いと自分の中の昂ぶりを解き放ちたいっていう生々しい欲望の狭間で。
「お願い、あたしの中でイって」
そうお願いした。匠くんの頭を下から両腕で掻き抱き、真っ直ぐにその躊躇いの色の浮かんだ瞳を見据えた。
匠くんはあたしの気持ちに押し切られて頷いた。そしてあたしを深々と貫いたその硬くて太い昂ぶりを腰を引いて引き抜いた。その動きで膣の中がずるずるとこすられ、あたしは苦痛に顔を歪めた。匠くんがはっとして動きを止めるのが分かった。
顔を歪めたまま強い口調で言った。
「駄目!止めないで」
あたしの叱咤に近い声に匠くんは辛そうに顔をしかめながら腰の動きを再開した。
殆ど引き抜き切ったものを匠くんはまた一気に突き入れた。膣内は愛液で十分に潤ってはいたけれど、膣を押し広げる程の太さのもので膣の襞が擦り立てられ て、容赦ない苦痛が襲い掛かってくる。無理やりに破られた処女膜も、引いては突き入れるを繰り返す動きの度に引きつれ激痛を生じさせる。
匠くんの動きは次第に余裕がなくなって来て、より大きな快感を得ようと激しく速くあたしの中を掻き回した。
ものすごい速さでその先端の大きく張り出した辺りまで引き抜いたかと思うと、一息に根元までその太く硬く屹立したものをあたしの中に突き入れ、あたしの奥深くに突き当たるまで深々と貫いた。
初めての硬く太いものに貫かれて傷ついた膣内を何度も何度も掻き回されこすり立てられる苦痛のため、苦悶で顔を歪め嗚咽と悲鳴が漏れるのを我慢できなかった。
「あひっ、ひっ、いっぐっ・・・ひいっ」
ずぶずぶと匠くんの硬いものが膣を出入りするたびにとめどなく苦悶の声が漏れ続けた。
匠くんはあたしのその声を聞きながらも、昂ぶりきった欲望を絶頂と共に放ちたいっていうどろどろした情欲に支配されて、リミッターが外れたようにひたすら腰の抜き差しを繰り返した。
苦痛の中、涙で滲む目を薄く開けて匠くんを見上げたら、匠くんは余裕のない切羽詰まった顔でひたすら腰を打ちつけ、あたしの膣の奥深くまで自分のものを突 き入れる動きに没頭していた。その顔はまるで怒っているかのようで、そんな匠くんを見るのは初めてで少し恐かった。でもあたしの身体で匠くんがそんなに必 死な表情になっているのが分かってすごく嬉しくもあった。
あたしの耳にはあたし自身の苦鳴の声だけではなく、匠くんが腰を打ち付ける度に漏れてくる切なげな声も聞こえていた。
「くっ、あっ、くうっ、」
はあはあと荒い息遣いに混じって切ない喘ぎ声が漏れていた。その声を聞いてとても愛しく思った。
「はあっ、だっ、めだっ、も、なみっ、もうっ、くっ、イクっ!出るっ!」
匠くんの緊迫した声が告げる。匠くんの限界が訪れようとしていることが分かった。
あたしは力いっぱい匠くんを抱き締めた。
うんっ、イってっ!・・・あたしのっ、中でっ!いっ、あたし、のっ、中、でっ、出してっ!!
苦痛に漏れる呻きに断ち切られながらも、夢中でそう叫んでいた。
くうっ、うあっ!
匠くんは一際強くあたしの中へと突き入れたかと思うと、そう甲高く叫び、全身を強張らせた。
あたしの中で匠くんのものはその膨らみを更に増したように感じた。そしてびくんびくんって激しく弾みあたしの膣をぐいぐいと押し上げた。
「ひっ」
その感覚にあたしも硬直した。
あたしの奥深くで匠くんのものは何度も何度もびくびくと脈打ち、その欲望の証を激しく射ち放っているようだった。
避妊用のゴムに隔てられて直接には匠くんの激しい射出を感じることはできなかった。それを微かに残念に感じながら、いつか避妊しないであたしの中で射ち出される匠くんの迸りを直接感じられるのかな、なんてほんの少し頭の片隅で思った。
匠くんの屹立はまだあたしの中でひくひくと小刻みに脈打っていた。
匠くんは強張らせていた身体の力を抜き、スイッチの切れたロボットのようにがっくりとあたしの上に沈みこんで来た。それでもあたしに全体重をかけないよう に四肢で体重を支えているのが分かった。あたしはもう少しあたしの上に乗っかってもいいよって伝えるように、その背中に両手を回してぎゅっと抱き締めた。
汗に濡れたお互いの肌が密着する感触と、少し苦しい位の匠くんの重みが心地よく感じられた。
疲れて脱力している匠くんの耳元に囁いた。
「気持ちよかった?」
匠くんは気だるそうに頭だけ起こして笑顔を見せた。
「うん。最高に気持ちよかったよ。萌奈美の身体」
あたしの身体っていう言い方が何だかすごく生々しくて、あたしは思わず顔を赤くした。恥ずかしかったけれど、でも匠くんの言葉が嬉しかった。あたしの身体で匠くんは最高に気持ちよくなってくれたんだ。あんなに必死になる位に。そう思うと自分の身体に自信が持てた。
 


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